298 桜井蓮は嫉妬しているようだ

藤丸詩織は以前に記憶喪失になったせいか、学生時代のことをあまり覚えていなかった。

藤丸詩織は正直に答えた。「覚えていません」

藤丸志穂は歯ぎしりしそうになった。付き合っていた彼氏のことさえ覚えていないなんてありえない、藤丸詩織が今ごまかしているとしか思えなかった!

藤丸志穂は腹が立ったが、表面上は笑顔を作って言った。「あはははは、詩織を追いかけた人が多すぎて、すぐには思い出せないのかもね」

藤丸詩織は藤丸志穂とこういったプライベートな話をしたくなかったので、ただ頷いて適当に相槌を打ち、それ以上口を開かなかった。

しかし、藤丸詩織と藤丸志穂が気にも留めなかったこの話題を、桜井蓮は心に留めていた。そして、すぐにある考えが浮かんだ。

藤丸詩織はとても優秀で、当時彼女を追いかけた人も多かった。桜井蓮は彼女が恋愛経験がないとは信じられなかった。今の「覚えていない」というのは、おそらく何人と付き合ったか覚えていないということだろう!