335 謝罪

司会者は笑顔で登場し、会場の雰囲気を盛り上げた後、緊張の瞬間が訪れた。「それでは、今回の準決勝の優勝者を発表いたします——」

香月蛍は顔を上げ、スポットライトが自分に当たり、壇上で優勝スピーチをする場面を思い浮かべた。他の人々は羨望の眼差しで彼女を見上げることになるだろう。

香月蛍は口角を上げ、勝利を確信した表情を浮かべた。

若宮佳奈は相変わらず淡々とした表情で、少しの感情の動揺も見せなかった。

香月蛍は若宮佳奈の様子を横目で見て、ますます彼女が気取っていると感じた。

司会者:「優勝者は——若宮佳奈さんです!」

司会者が結果を発表すると、会場から大きな拍手が沸き起こった。香月蛍の得意げな表情は凍りついたまま、若宮佳奈を信じられない様子で見つめた。

若宮佳奈は緊張していた心が解きほぐれ、微笑みを浮かべた。

香月蛍は若宮佳奈の笑顔を見て、まぶしさを感じ、抗議の声を上げた。「この結果は認められません!」

その言葉が落ちると、会場は静まり返り、全ての視線が香月蛍に注がれた。

藤丸詩織は腕を組み、皮肉めいた笑みを浮かべながら香月蛍を見て、淡々と言った。「なぜ認められないのか、説明してください。」

香月蛍:「あなたたちは私の作品に満足していたはずなのに、なぜ若宮佳奈を優勝にしたんですか?彼女がお金を渡したんじゃないですか?」

香月蛍はその言葉を言った後、数秒間の間を置いて再び口を開いた。「いや、違う。若宮佳奈は貧乏だから、お金なんてないはず。きっと裏口入学したんでしょう。きっと協賛企業の誰かと関係を持ったんでしょう!」

藤丸詩織は怒りで机を叩き、心の中の怒りを抑えながら言った。「香月さんも女性なのに、なぜ他の女性についてそんな悪意のある推測をするんですか?」

香月蛍は少しも反省の色を見せず、さらに続けた。「あなたがそんなに若宮佳奈を庇うのは、あなたも裏口入学で特別審査員になったからでしょう!」

桜井蓮は東京に戻った後、藤丸詩織が刺繍コンテストを開催していることを知り、急いで駆けつけた。しかし、到着するなり香月蛍のその言葉を耳にした。

彼の表情は暗くなり、冷たい目で香月蛍を見つめた。

相良健司はその様子を見て、言った。「桜井社長、早く下に行って藤丸さんを助けましょう。」

桜井蓮は断った。「必要ない。」