402 物が藤丸詩織に向かって投げられる

藤丸明彦は最終的に、しょんぼりと立ち去るしかなかった。

氷川静は藤丸詩織の手を取り、低い声で言った。「お前の伯父さんとお父さんは二人とも私の息子だけど、性格は全く違うのよ」

藤丸詩織はぬるま湯を氷川静に注ぎ、優しく慰めた。「おばあちゃん、怒らないで」

氷川静は水を飲んでから、ため息をつき、頭を振って怒っていないことを示してから、続けて話し始めた。「お前のお父さんは幼い頃から賢くて親孝行だったけど、伯父さんは少し自己中心的だったの。普段から、私は彼に厳しく接して、その悪い癖を直してほしいと思っていたけど、たぶん私のやり方が間違っていたのね。彼は少しも変わらなかった」

氷川静は藤丸詩織を見つめて言った。「私が彼をきちんと育てられなかったせいで、藤丸明彦がお前を虐めて、こんなに辛い思いをさせてしまった」

藤丸詩織は氷川静を抱きしめた。「おばあちゃん、それは全部過去のことよ。悲しまないで。全ての過ちを自分のせいにしないで」

氷川静は長い間考え込んでから、やっと理解したように藤丸詩織を真剣な眼差しで見つめた。「もし伯父さんが今後またお前を傷つけるようなことをしたら、遠慮なく仕返ししなさい。私の顔を立てる必要なんてないわ」

藤丸詩織はうなずいた。「おばあちゃん、わかりました」

二人はその後、この不愉快な出来事を頭の中から追い出した。

翌日。

藤丸詩織が仕事をしていると、真壁誠が慌てて戸を叩き、オフィスに入ってきて焦りながら報告した。「藤丸社長、楽来庵と森村羽矢斗が喧嘩を始めました」

藤丸詩織は眉をひそめ、疑問を投げかけた。「どういうことですか？」

真壁誠は「今日のバラエティー番組の収録で、クイズコーナーがあったんですが、楽来庵は知識が豊富で、たくさんの問題に正解しました。森村羽矢斗は私たちが楽来庵に答えを教えていたと思い込み、不正をして答えたと言い出して、それで二人は言い争いになったんです」

藤丸詩織は立ち上がり、冷たい声で言った。「今日はバラエティー番組の放送初日なのに、こんなことが起きるなんて。私が見に行きましょう」

彼女は以前の履歴書に書かれていた森村羽矢斗の性格描写を思い出した。「森村羽矢斗は親しみやすいお兄さんキャラじゃなかったの？どうしてこんな些細なことで喧嘩になるの？」