395 体重計が壊れた

藤丸詩織は城之内祐希の瞳の奥に潜む冷たさを一目で見抜き、淡々と口を開いた。「城之内さんは本当に気が長いですね。あの一件があったのに、私のことを全く気にしていないなんて、まるで長年の知り合いみたいです」

城之内祐希は笑顔が少し固くなった。藤丸詩織が表面的な付き合いすら避けようとしているとは思わなかった。

彼女は前髪を耳にかけながら、笑顔を作って言った。「それはもう昔のことですから、私はすっかり忘れていました」

城之内祐希は藤丸詩織が自分の恥ずかしい過去を蒸し返すのを恐れ、話題を変えた。「ビジネスの話をしましょうか」

藤丸詩織は頷き、目の前の契約書を城之内祐希に渡しながら、正直に付け加えた。「契約書を少し修正しました。もし不満があれば、今回は契約しなくても構いません」