藤丸詩織は榊詩門が去った後、スタジオの名前に目を落とし、涙が一滴一滴こぼれ落ちた。
大学時代、彼女は榊詩門と起業について話し合ったことがあった。
榊詩門はこう言った:「もし将来起業するなら、スタジオの名前を詩門スタジオにしたい。これは私たちの共同財産を表すものだから」
藤丸詩織は不思議そうに尋ねた:「あなたが立ち上げるスタジオなのに、なぜ私の名前が先なの?」
榊詩門:「最終的に稼いだお金はあなたに管理してもらうからさ!」
詩門スタジオ……
なぜ誰かがこの名前を付けたのか、偶然なのか?それとも……
藤丸詩織の脳裏に榊詩門の姿が浮かび、心は期待で一杯になったが、次の瞬間その期待を押し殺した。最終的な結果が失望に終わることを恐れていたから。
東京のある高層ビルで。
スーツを着た男性がドアをノックし、中から聞こえてきた穏やかな声に従って入室し、頭を下げて報告した:「代表、藤丸さんの方から連絡がありまして、社長が私たちの製品にとても満足されており、詳しく話し合いたいとのことです」
榊詩門は軽く笑って、「明日なら時間がある」
彼は立ち上がり、窓の外の景色を眺めながら、口元に笑みを浮かべた。
この三年は一世紀のように感じられた。ようやく本当の再会の時が来たんだ。
榊詩門は例の連中のことを思い出し、冷たい声で尋ねた:「最近、彼らに動きはあるか?」
部下:「今のところ特に動きは確認されていません」
榊詩門は応じて、念を押した:「必ず監視を続けろ。一切の油断も許さない」
部下は急いで応じた:「はい!」
榊詩門は拳を握りしめた。今度こそ詩織をしっかり守り抜く、二度と誰にも彼女を傷つけさせない。
翌日。
藤丸詩織は車の中で、詩門スタジオの資料を見ていた。
詩門スタジオは最近設立されたばかりで、資金は公開されていないため、その財力は不明だった。しかし藤丸詩織は、各方面での厳格な制度作りと斬新なアイデアを見る限り、将来必ず東京で一席を占めることができると確信していた。
彼女はまた、スタジオの責任者が誰なのか、なぜたまたまこの名前を付けたのか気になっていた。
真壁誠は車を止めて、「藤丸社長、レストランに着きました」
藤丸詩織は我に返り、「ここで待っていて。今回の商談は私一人で行くわ」と言った。
真壁誠は不安そうに、「藤丸社長……」