桜井蓮は怒りで顔を真っ赤にして、冷たい声で言った。「男はこういう格好をするのが当たり前だ」
藤丸詩織は笑みを浮かべたが、その笑顔は目には届いていなかった。「じゃあ、あなたの目は選択的に見えないの?温泉に入るとき、女性もこういう格好をしているのが見えないの?」
桜井蓮は表情が凍りつき、口を開いたものの、しばらく言葉が出なかった。
藤丸詩織は続けて言った。「それに、私がどんな格好をしようと、あなたが非難する理由にはならないわ。誘惑するって?それはあなたの考えが不純なだけよ。病院で頭を診てもらうことをお勧めするわ」
桜井蓮は榊蒼真の方を向いて、冷たく問いただした。「好きな人がこんな格好をしているのを我慢できるのか?」
榊蒼真は表情を変えずに答えた。「姉さんが何を着たいかは、姉さんの自由です」
藤丸詩織は桜井蓮とこれ以上話す気がなく、榊蒼真の手を引いて温泉室へ向かった。
桜井蓮は藤丸詩織と榊蒼真が一緒に去っていく後ろ姿を見つめ、瞳の色がさらに暗くなった。先ほどの言葉を思い返し、彼は後になって何かを悟ったようだった。
周防司は暗い顔をして戻ってきた桜井蓮を見て、すぐに彼が再び藤丸詩織に撃沈されたことを理解した。このことには慣れていたので、特に驚きはしなかった。
桜井蓮:「俺の頭がおかしいと思うか?」
周防司は即座に精神が集中し、目を輝かせて桜井蓮を見た。藤丸詩織の前で撃沈されるのには慣れていたが、まさかこんな質問をするとは思わなかった。
彼は今になって、先ほど桜井蓮が出て行った時に付いていかなかったことを後悔していた。そうすれば、角を曲がったところで何が起こったのか分かったはずだった。
周防司:「どうしていきなりそんなことを聞くんだ?」
桜井蓮は答えず、なおも尋ねた。「俺の頭がおかしいと思うか?」
周防司は心の中で必死に頷きながらも、口では婉曲に言った。「いい脳科の専門医を何人か知ってるんだ。後で紹介してやろう」
桜井蓮は真っ直ぐに周防司を見つめて言った。「つまり、俺の頭がおかしいと言うことか」
周防司は軽く咳払いをして、弱々しく弁解した。「そんなことないよ。ただ知り合いがいるって言っただけさ。もちろん、君の頭はおかしくないと思うよ。ただ、知能指数に比べて感情指数が少し低いだけだと思う」