「どうした?知りたくないのか?」影山瑛志は引き返すことなく、目的地に到着すると警察署の前で車を止め、先に降りて蘇我紬の側に来て、助手席のドアを開け、彼女に降りるように促した。
蘇我紬は頑固に車に座ったまま、まったく動こうとしなかった。「白川蓮じゃないってわかったから、わざわざ見に行く必要はないわ」
わざわざ苦しい目に遭いに行く必要はない。
しかし影山瑛志は譲らず、その眼差しは蘇我紬に降りるように命じていた。
二人はこうして数分間にらみ合いを続けた後、影山瑛志は目を細めて説明した。「たとえ白川蓮が背後で指示していたとしても、影山京介は彼女の名前を出さず、ずっと否定し続けている。警察には証拠がない。証拠がなければ何もできないんだ」
もっともらしいことを言っている。
蘇我紬は軽く笑った。「証拠が必要なの?あなたの影山瑛志に解決できないことがあるの?あなたに逆らった人たちは、みんな警察で解決したの?」
影山瑛志は眉間を揉みながら、ため息をついた。「紬、君は僕を困らせている」
「そんな大それたことは」
影山瑛志は笑った。「今の君には、できないことなんてないようだね」
「結局、あなたは白川蓮の言葉を信じているのね?この件が彼女のせいだとしても、あなたは彼女を信じることを選ぶの?たとえあなたが遅れて来て、あの男が私に何かしていたとしても、それは構わないということ?」
蘇我紬は奥歯を噛みしめながら言い終えると、まるで空気の抜けた風船のように、異常なほど静かになり、無表情になった。
影山瑛志は一目で彼女が怒っているのがわかった。
彼はただ事実を述べた。「20分間、あの男は君に何もしなかった。君が影山若奥様だと知ってからは、怖気づいてしまったんだ」
影山瑛志は、ベッドに横たわっていた蘇我紬の姿、特に残された痕跡を思い出し、唇を引き締めた。
しかし蘇我紬はその言葉を聞いて、凍りついた。
20分間...
彼女はあの男の部屋に20分も居たのだ!
蘇我紬は信じられない様子で影山瑛志を見つめ、声を詰まらせながら言った。「20分もかかってやっと来たの?」
影山瑛志は彼女を一瞥し、鼻を撫でながら、少し落ち着かない様子で「監視カメラ室で君を探すのに時間がかかったんだ」と言った。
「そう...」