081 夏川澄花に男ができた!

蘇我紬は自分の携帯に多くの不在着信があることを知っていたが、全て消去してしまった。

一つも気にしたくなかった。

ネットを切断し、オフラインゲームをしたり、ドラマを見たり、寝たり、時々本を読んだりしていた。夏川澄花の書斎には、若い頃二人で一緒に買った恋愛小説がたくさんあった。

夏川澄花は物語の中の人物に憧れを抱き、最後には女優になって、その人物の人生を演じることになった。

蘇我紬は夏川澄花の人生を羨ましく思っていた。

そして憧れてもいた。

蘇我紬は一冊の本を手に取った。表紙は良く保存されていて、出版日が何年も前でなければ新品だと思ったかもしれない。ただ開いてみると、黄ばんだページを見て、やっと歳月の痕跡を見つけることができた。

夏川澄花が勢いよく部屋に入ってきた時、目にしたのはそんな光景だった。蘇我紬が静かに日向ぼっこをしながら、本を読んでいる姿。

その光景は、まさに静かな時の流れそのものだった。

蘇我紬は驚くほど美しかった。このような時、夏川澄花はいつも感慨深く思うのだった。蘇我紬が生まれ持った才能を活かせなかったことが、良かったのか悪かったのか。この美貌なら、どんな見た目重視の業界でも引く手数多だったはずなのに。

夏川澄花は自分の感情を抑え込んだ。正直に言えば、この美しい瞬間を壊したくなかった。

数日前に来た時の苦しそうな蘇我紬とは、あまりにも違いすぎた。

彼女は自分の心の中の思いを置いておき、探るように尋ねた。「紬、心配したわよ。どうして連絡をくれなかったの?」

蘇我紬はようやく顔を上げ、夏川澄花が来ていることに気付いた。その言葉を聞いて頭を掻きながら、「澄花、忘れたの?何かあったら電話してって言ったでしょ?ネット切ってて、一人で静かにしたかったの。」

「あ、そうだった。本当に忘れてた。今回はお弁当の注文はしてないの。直接料理を作りに来たわ。どう?」夏川澄花は笑顔で蘇我紬の前に来て、日光に照らされた彼女の髪を撫でた。金色に輝いていた。

蘇我紬は本を置いて立ち上がり、「いいわね。私も最近いくつか料理を覚えたの。きっと食べたことないと思うわ。作って味見してもらおうかしら。」