081 夏川澄花に男ができた!

蘇我紬は自分の携帯に多くの不在着信があることを知っていたが、全て消去してしまった。

一つも気にしたくなかった。

ネットを切断し、オフラインゲームをしたり、ドラマを見たり、寝たり、時々本を読んだりしていた。夏川澄花の書斎には、若い頃二人で一緒に買った恋愛小説がたくさんあった。

夏川澄花は物語の中の人物に憧れを抱き、最後には女優になって、その人物の人生を演じることになった。

蘇我紬は夏川澄花の人生を羨ましく思っていた。

そして憧れてもいた。

蘇我紬は一冊の本を手に取った。表紙は良く保存されていて、出版日が何年も前でなければ新品だと思ったかもしれない。ただ開いてみると、黄ばんだページを見て、やっと歳月の痕跡を見つけることができた。

夏川澄花が勢いよく部屋に入ってきた時、目にしたのはそんな光景だった。蘇我紬が静かに日向ぼっこをしながら、本を読んでいる姿。