178 あなたの好みのままに

影山瑛志が言ったのは、彼女が今回制御を失った件についてだった。

蘇我紬はそれを聞いても、表情は淡々としており、特に反応を示さなかった。今は何にもやる気が起きず、ただこうして静かに横たわっていたいだけで、何もしたくなかった。

当然、影山瑛志とこれ以上話したくもなかった。

しかし影山瑛志はそれに気付いていないようで、むしろ蘇我紬があまりにも具合が悪くて彼の相手をする余裕がないのだと思っていた。確かに、身体的な苦痛は相当なものだったから。

特に蘇我紬が何度も発作を起こすのを目の当たりにして、影山瑛志も胸が痛んでいた。

仕事どころではなかった。

蘇我紬はその後も影山瑛志のぶつぶつと続く話を聞かされたが、最終的に彼女が目を閉じると静かになった。

そうしてようやく安らかに眠りについた。

ただ、目を覚ました時に最初に目に入ったのが影山瑛志だったため、思わず眉をひそめ、いらだちを見せた。

朝早くから気分を台無しにされて、影山瑛志は本当に彼女の心をかき乱すのが上手くなってきていた。

影山瑛志にとって、この光景は蘇我紬が目を覚まし、彼を一瞥した後すぐに眉をひそめて目を閉じ、顔を背けたというものだった。その様子は明らかに嫌悪感を示していた。

彼女の反応を見ていると、このまま眠り続けることさえ苦痛そうだった。

影山瑛志は口角をピクリと動かし、一瞬言葉を失った。

そこへ軽いノックの音が一度して、すぐに止んだ。早乙女燐がドアを開けて入ってきた。影山若様は彼が朝食を買いに出かけた時、入室の際は物音を立てないよう、蘇我紬を起こさないようにと指示していた。

早乙女燐は静かに入室し、影山瑛志を見て挨拶をした後、用意した朝食をテーブルに置いた。

そして退室した。

お粥の香りと甘い匂いが病室全体に漂った。

影山瑛志は朝食を全て開け、そしてゆったりと椅子に座り、ベッドで安らかに眠る蘇我紬を見つめた。

2分も経たないうちに、蘇我紬の眉間のしわが深くなり、唇を固く結び、小さな顔が緊張して、もはや眠っている様子は全くなかった。

影山瑛志は彼女の小さな仕草を興味深げに眺め、口角に薄く笑みを浮かべた。

蘇我紬は眠気が全くなくなっていたにもかかわらず、目を開けようとはしなかった。