220 彼にはただ頷くしかなかった

病院に着いた。

蘇我紬が総合的な検査を受けた後、影山瑛志はようやく安心できた。

病室の傍に座り、蘇我紬を見つめる彼の目には消えない憂いが浮かんでいた。「紬、こんなことをする時、何を考えていたのか教えてくれないか?」

「次からは避けようよ、いいかな?」

蘇我紬は茫然と彼を見つめ、よく考えてみると、あの時は影山瑛志のことばかり考えていた。

しかし、影山瑛志のそんな苦しそうな様子を見て、蘇我紬はそれを口にすることを選ばず、淡々と言った。「私にもわからないわ、何も考えていなかったような...」

すべての出来事は、おそらく一つの美しい誤解から始まったのだ。

蘇我紬と影山瑛志もまた然り。

退院後、影山瑛志は今回の旅行計画を早期に終了し、蘇我紬を心理専門病院に連れて行った。それはS市で最も有名な心理病院で、そこの病室は特別な処理が施されていた。

中での一般的な自殺手段は、すべて実行不可能になっていた。

さらに二十四時間体制で監視カメラをチェックする人員が配置され、どの病室で異常が発生しても、すぐに駆けつけて制止できるようになっていた。

必要な患者には、一対一の監視が行われる。

トイレに行く時間さえも規定されていた。

ここに来たばかりの時、蘇我紬は部屋の中にある唯一の監視カメラを見つめていた。それは巧妙に隠されていたが、どうあれ、蘇我紬にも正常な時はあり、正常な時は普通の思考で、自殺や負の感情を考えることはなかった。

しかし一度始まってしまうと、あるいは何かに刺激されると、感情は制御不能なほど激しくなり、完全に蘇我紬のコントロールを超えてしまう。

その時は自主意識さえも失ってしまう。

感情に支配された狂人となってしまうのだ。

蘇我紬は唯一のベッドに横たわった。このベッドは角が丸いだけでなく、触れてみると設計が柔らかく、押すと凹むようになっていた。

まだ良かったのは、この部屋には窓があることだった。密閉されていて新鮮な空気を取り入れることはできないが。

それでも蘇我紬は満足していた。

落ち着いたばかりの時、影山瑛志は彼女に付き添っていたが、明らかに心ここにあらずという様子だった。蘇我紬は眠たいふりをして、しばらくすると影山瑛志は立ち去った。

ただし、慌ただしく去っていった。

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