337 草を打って蛇を驚かす

彼女は、自分がこの話をしなければ、瑛志はきっと黙って全てを処理するだろうと信じていた。でも、もうこのままではいけないと思い、瑛志を助けたいと思った。

瑛志から約束を得た後、蘇我紬はようやく会社を後にした。

帰り道で、紬は久世澪からの電話を受けた。

「紬、今どこにいるの?迎えを寄越すから、家に帰ってきて。少し話があるの」

久世澪の声は穏やかに聞こえたが、紬の心には不安が募るばかりだった。

前回の動画が出回った時は、事態が大きくなる前に瑛志が押さえ込んでしまったので、久世澪は動画のことを知らないかもしれない。

しかし今回は、瑛志でさえ手の施しようがない状況だった。

久世澪が見たときにどんな気持ちだったのか分からない。

「お母さん、今車の中だから、すぐに帰るわ」紬は感情を隠すように努めた。