「部屋に連れて行かなくていい。バルコニーに行って、それから時田浅子を呼んでくれ。彼女と話がある」藤原時央は江川楓に命じた。
「はい」江川楓は藤原時央をバルコニーまで押し、振り返って時田浅子を探しに行った。
ちょうど2階に着いたとき、白川健斗の姿が見えた。
「白川先生、若奥様を見かけませんでしたか?藤原若旦那がお呼びです」
「若奥様は昨夜、彼に驚かされて高熱を出されたんですよ。彼はまだ若奥様に何を求めるつもりなんですか?また驚かせるのが怖くないんですか」
江川楓:……
彼はもう時田浅子を探しに行く勇気がなかった。
今頃、老夫人が付き添っているに違いない。
この状況で空気を読まずに人を探しに行けば、老夫人に叱られるだけだ。
藤原若旦那の冷たい表情よりも、老夫人の方がまだ怖かった。