藤原時央は声を出さず、パソコンを開き、明らかに老人とこの話題を続けたくないようだった。
老人は藤原時央が頑なな様子を見て、言葉もなく頭を振った。
恋愛に関しては、藤原時央は絶対にどうしようもない泥のようなもので、立て直すことができないタイプだった。
「認めたくないなら、私もお前をどうすることもできない。いつか後悔する日が来るぞ!」
老人はそう言って、部屋を出て行った。
藤原時央はドアが閉まる音を聞きながら、手の動きを止めた。
焦っている?
彼はこの言葉を何度も考えていた。
心の中の正体不明の怒りがまた湧き上がってきた。
「パン」という音とともにパソコンを閉じた!
彼は、時田浅子が彼の人生で出会った最大かつ最も対処が難しいトラブルだと感じていた!
10時頃、外から物音がした。
藤原時央は窓の外を見た。
江川楓と安藤さんが車にスーツケースを積み込んでいた。
「山本おばさん、あなたは後で臨海別荘に行って片付けてください。私が持っていかなかったものと浅子のものを一緒に本邸に送ってください。」
「はい、あなたと若奥様を空港にお送りした後、すぐに臨海別荘に行って片付けます。」
老人が顔を上げると、藤原時央の姿が階段の前に立っているのを見つけた。
「浅子、さっき時央が私たちを空港まで送ると言っていたよ。」老人は振り返って時田浅子に言った。
藤原時央:……
時田浅子:……
時田浅子の眉間がそっと寄り、藤原時央の方向を見た。
心の中で、きっと藤原時央が自ら行きたいと言ったわけではなく、老人が圧力をかけて彼に行かせたのだろうと思った。
「お爺さん、私たち二人と安藤叔父さん、それに江川楓と山本おばさんで、ちょうど一台の車に収まります。藤原若旦那が行くとなると、もう一台車を出さないといけません。」
老人は人数を計算していなかった。
この考えも、今思いついたばかりだった。
彼はただ純粋に孫に表現する機会を与えたかっただけだ。
老人は藤原時央を見て、彼の態度を待った。
どうせ、浅子も藤原時央に送ってもらいたくないだろう。
藤原時央も行きたくないなら、この泥は、もう助けないぞ!
「江川楓、私の車を持ってきなさい。」藤原時央は江川楓に命じた。
「はい!」江川楓はすぐに車庫に車を取りに行った。
老人の目に笑みが浮かんだ。