第115章:抱きしめて離したくない

時田浅子は一瞬固まり、言葉を失った。

しかし、藤原時央というこの厄介事は、彼女は根本的に関わりたくなかった。

外の状況がどうなっているのかも分からない。

藤原時央がすでに人を連れて戻ってきたのだから、この結婚はさすがに解消できるはずだろう?

彼女は思わず外を見やった。どうしてこんなに時間がかかっているのだろう、藤原時央はまだあの女の子を連れて入ってこないのか?

老人は時田浅子の反応を見て、少し心が痛んだ。

この子は優しすぎるのだ。今こそ、正妻としての威厳を見せるべき時だ。

「浅子、私は時央をよく知っている。もし彼に本当に彼女がいるなら、私と彼の母親が全く知らないはずがない。彼は私たちに黙っていたりしない。だから、彼が突然誰かを連れてきたことに、私は彼の意図を疑っている」と老人はさらに諭した。

時田浅子は、老人と藤原奥様は藤原時央が彼女を好きではないことを知っているに違いないと思った。ただ彼女のために強く立ち上がろうとしているだけだ。

この状況で、彼女は絶対に藤原時央の足を引っ張るわけにはいかない!

「おじいさま、彼の意図は何だと思いますか?」時田浅子はわざと尋ねた。

「あいつは頑固な性格で、誰かに決められることが嫌いなんだ。お前と彼の結婚は決められたものだと思っている。だから離婚したくて、こんな女の子を連れてきて私をごまかそうとしているんだ!」老人は怒りを露わにし、思わず言葉が飛び出した。

言い終わった後、彼はようやく気づいた。

「浅子、私は時央が離婚したいと言っているわけではない。彼がまだ状況に慣れていないということだ。彼のような人間は、誰かに感情を抱くのが難しい。でも、もう結婚したのだから、ゆっくりと愛情を育んでいけばいい」

時田浅子はため息をついた。「おじいさま、でも藤原若旦那は本当に私のことを好きではないと思います。多分、私は彼の好みのタイプの女の子ではないのでしょう」

「そんなことはない!彼はきっとお前を好きになる、私が保証する!」老人は真剣な表情で手を挙げた。

時田浅子:……

外から突然足音が聞こえた。

大木嵐が藤原時央の車椅子を押して入ってきた。

時田浅子はすぐに藤原時央の後ろを見たが、先ほどの女の子の姿は見えなかった。