時田浅子はハッとした。
藤原時央はその隙に毛布を引き戻し、再び足にかけた。
彼がそう言った以上、彼女もこれ以上取り合うわけにはいかなかった。
今日、この毛布は藤原時央にとって格別に心地よかった。
この毛布からは時々、かすかな香りが漂ってきた。
その香りは、時田浅子の身につけているものと全く同じだった。
彼はこのような柔らかいものに抵抗できず、むしろ執着さえ感じていたが、すべてのものに愛着を持つわけではなかった。
この毛布は、彼にとって当分手放せないものになっていた。
その理由は、彼自身にもわからなかった。
老人の病室に戻る道中、藤原時央はずっと、どうやってこの毛布を手元に残せるかを考えていた。
時田浅子と藤原時央が一緒に時田秋染を見舞いに行ったことで、最も緊張していたのはお爺さんだった。