第154章:彼女こそが彼を癒す良薬

時田浅子は彼の手を握った。

藤原時央は彼女の力を借りて、再び立ち上がった。

ただ、足はまだ震えており、よろめいて、いつ倒れてもおかしくない状態だった。

彼はベッドに向かって歩こうとしたが、足が上がらなかった。

彼の位置からベッドまでは十歩も満たない距離だったが、彼にとっては越えられない彼岸のようだった。

突然、彼の体が傾き、もう支えられなくなった!

時田浅子は必死に彼の腰を抱え、自分の体を彼の支えにした。

藤原時央は彼女を見下ろし、その目の奥に感情が閃いたが、あまりにも速くて捉えられなかった。

深く息を数回吸い込み、彼はもう一度試みた。

時田浅子は彼が動いたのを見て、すぐに彼の歩調に合わせて小さく一歩動いた。

「ゆっくりでいいよ、急がなくて」彼女は非常に忍耐強く励ました。

藤原時央の気持ちは大いに慰められ、ゆっくりともう一歩進んだ。

「いいよ、力があるなら、少し立っていて」時田浅子の声が再び響いた。

まるで歩き始めたばかりの子供を励ますかのようだった。

藤原時央は30秒ほど休んでから、また一歩踏み出した。

この十歩ほどの距離を、約10分かけて歩いた。

これは彼が目覚めてから、最も長く立ち、最も多く歩いた一回だった。さらに、先進的なリハビリ機器をも超えていた。

藤原時央がベッドの端にしっかり座ると、時田浅子はようやく安堵のため息をついた。

彼女の額には汗が浮かび、小さな顔には魅力的な紅潮が広がっていた。

「藤原若旦那、横になるのを手伝いましょうか?」

藤原時央はうなずいた。

時田浅子はしゃがみ込み、彼の足を持ち上げてベッドに乗せ、布団を引き上げて彼を覆った。

藤原時央は横になった。

時田浅子はこの大きなベッドを見て、結局は棚から布団を一組取り出し、床に敷いた。

藤原時央の目が沈み、心の中で言い表せない感情が湧いた。

怒り!しかし、何に怒っているのかも分からなかった。

彼は体を回して時田浅子に背を向けた。

彼は時田浅子にベッドで寝るなとは言っていない、彼女が自分から床で寝ると言ったのだ!

「電気を消して」藤原時央の声が突然響いた。

時田浅子はまだ布団を整えていたが、立ち上がって電気を消し、布団に潜り込んだ。