「こちらは時田浅子さん、女性主人公の声優で、和芸大学の声優専攻です」と風間監督が二人に紹介した。
「はじめまして、よろしくお願いします」と時田浅子は挨拶した。
「こんにちは」と江川湊はそっけなく返事した。
風間監督は江川湊の方を見て、「あなたは時間がないし、時田さんは学校もあるから、このレコーディングスタジオは当分他の人には使わせず、あなたたち二人だけに使ってもらうけど、いいかな?」
「いいですよ」と江川湊はうなずいた。
「ありがとうございます、風間監督」と時田浅子も急いで頭を下げて感謝した。
時田浅子と江川湊は少し打ち合わせをして、いくつかの掛け合いのシーンを選び、同時に録音することにした。
風間監督も席を立たず、二人の連携がどうなるか見ていた。
江川湊は自分が演じた役の声を当てるので感情をつかみやすかったが、時田浅子は女性主人公の演技に合わせて感情を込める必要があった。
しかし、時田浅子が口を開くと、江川湊は驚いた。
後半になると、彼は自分の感情さえも時田浅子に引き込まれていると感じた。
二人の連携は非常に息が合っていた。
風間監督も非常に満足していて、想像以上にスムーズに進んでいた。
江川湊は優秀な俳優で、台詞のほとんどを覚えており、時田浅子はプロの声優で、台詞にも慣れていたため、二人はほとんどミスをせず、多くのシーンが一発OKだった!
風間監督は時計を見ると、もう12時近くになっていた。
この二人はまだ止める気配がなかった。
お互いに必死だった。
「このシーンが終わったら、少し休憩しましょう」と風間監督は華さんに指示した。
「はい」と華さんはうなずき、中にいる二人に伝えた。
録音が終わると、時田浅子と江川湊が前後して出てきた。
「もう遅い時間だし、一緒に食事に行きましょう。午後はまた録音を続けてください。私は他の用事があるので、戻ってきません」と風間監督は皆に言った。
「この近くに本格的なレストランがあると聞いたんですが、そこに行きませんか?」と江川湊が提案した。
「そこにしましょう」と風間監督は異議なく、時田浅子の方を向いて、「時田さん、あとで私たちと一緒に行って、午後はまた彼らと一緒に戻ってきてください」
「はい」と時田浅子は小さな声で答えた。
江川湊が予約した場所は、高級中華レストランだった。