人々が行き交い、絶え間なく流れる中、ただ二つの影だけが静止していた。
藤原時央の視線は重々しくその方向を見つめていた。
鈴木真弦は完全に呆然としてしまい、急いで肘で江川楓をつついて、疑問に満ちた表情で江川楓を見た。
少し離れたところにいるのは奥様ではないか?そして奥様と親しげに振る舞っている男は誰なのか?
藤原社長がここに来たのは、まさか...浮気現場を...?
江川楓は鈴木真弦を白い目で見た。何をこそこそやっているんだ?こんなに人がいるのに、彼が鈴木真弦に状況を説明できるわけがないだろう!
商業街の責任者や管理者たちが十数人、ぞろぞろと藤原時央の後ろについてきていた。今、彼らも雰囲気が少しおかしいことを感じていたが、何が起きているのか誰も分からず、声を出す勇気もなかった。