第316章:藤原さまが自ら護衛したい

「もういい。」藤原時央は淡々と応えた。

「わかったわ、これだけね。」斉藤若春はメニューを支配人に渡し、それから視線を向かいに座っている時田浅子に向けた。

「時央、見てよ、さっきは自分の好きなものとあなたの好きなものばかり注文して、時田さんのことを忘れてたわ。」

「大丈夫です、私は何でも食べられますから。」時田浅子は静かに答えた。

「それじゃ申し訳ないわ、あなたたち二人の食事に私が便乗しているようなものだし。」斉藤若春はそう言ったが、彼女の表情には少しも申し訳なさそうな様子はなかった。

時田浅子は答えなかった。彼女は斉藤若春の口調に含まれる偽善を感じ取り、返答する気にもならなかった。

「時央、国内のエンターテイメント会社は投資しやすいって聞いたわ。資金の回収も早いって本当?何かわからないことがあったら、助けてね。」斉藤若春は甘えた口調で言った。

「君は投資だけじゃなかったのか?最近いくつかのエンターテイメント会社を買収したそうだが?自分で運営に参加するつもりか?」藤原時央が尋ねた。

「私がいくつかのエンターテイメント会社を買収したことまで知ってるの?ただ暇だから、何か仕事を見つけたいだけよ。」斉藤若春は笑顔で答えた。

「その分野に興味があるなら、何か仕事を見つけるのもいいだろう。」

「あなたがそう言ってくれるなら、安心したわ!」

時田浅子は本当に空気になって個室から消えてしまいたかった。実際には、彼女はこんな気まずい状況で座っているしかなく、ただできるだけ自分の存在感を薄めようとするだけだった。

藤原時央は時田浅子の方を見て、彼女がずっとグラスを持って水を飲んでいることに気づいた。まだ立ち直れていないのだろうか?

彼女をレストランに連れてくるべきではなかった、直接帰るべきだった…もし彼の家に帰っていたら、彼女の気持ちはずっと緊張したままだっただろうか?

そう考えると、藤原時央の眉間にはしわが寄った。

言ってみれば、彼はこれまでの人生でこのような難題に直面したことがなかった。

こんなにも彼を途方に暮れさせるとは!