「もういい。」藤原時央は淡々と応えた。
「わかったわ、これだけね。」斉藤若春はメニューを支配人に渡し、それから視線を向かいに座っている時田浅子に向けた。
「時央、見てよ、さっきは自分の好きなものとあなたの好きなものばかり注文して、時田さんのことを忘れてたわ。」
「大丈夫です、私は何でも食べられますから。」時田浅子は静かに答えた。
「それじゃ申し訳ないわ、あなたたち二人の食事に私が便乗しているようなものだし。」斉藤若春はそう言ったが、彼女の表情には少しも申し訳なさそうな様子はなかった。
時田浅子は答えなかった。彼女は斉藤若春の口調に含まれる偽善を感じ取り、返答する気にもならなかった。
「時央、国内のエンターテイメント会社は投資しやすいって聞いたわ。資金の回収も早いって本当?何かわからないことがあったら、助けてね。」斉藤若春は甘えた口調で言った。