第397章:刺激された勝負欲

時田浅子は振り向いて携帯を探しに行ったが、ベッドサイドテーブルには一台の携帯電話しかなく、それも藤原時央のものだった。

彼女はようやく思い出した。彼女を誘拐した人物が、彼女の携帯電話を踏み潰したのだ。

電話もかけられず、彼女は本当に柳裕亮の状況を知る術がなくなった。

「一回だけ呼ぶから、ごまかさないでね」時田浅子は頬を膨らませて藤原時央を見つめた。

藤原時央はうなずいた。

「だ...だんな様」時田浅子の声は蚊のように小さかった。

「聞こえないよ」藤原時央は少しも面子を立ててくれなかった。

「だんな様」時田浅子はもう一度呼んだ。

藤原時央はようやく満足げにうなずいた。

「さあ、早く教えて!」

「柳裕亮は大丈夫だ。見深のところで朝まで点滴を受けて、もう帰った」

「よかった」時田浅子はほっと息をついた。「私、この件は私を狙ったものだと思うの。もし私のせいで他の人に迷惑がかかったら、心苦しくて」

藤原時央は再び時田浅子のあごを持ち上げた。「両思いじゃなかったのか?どうして『他の人』になったんだ?」

彼は本当に得意げに笑った。

時田浅子は自分の嘘がばれたかもしれないと気づいた。

「私...私は彼に片思いしてただけよ。あれは全部私の妄想だったの、ダメ?」時田浅子は強情に言い返した。

「じゃあ教えてくれ。昨夜、なぜ彼じゃなく俺だったんだ?」藤原時央の一言で、時田浅子の嘘はあっさりと暴かれた。

時田浅子は一瞬にして恥ずかしさで穴があったら入りたい気分になった。

一方、藤原時央は、まるで勝利を収めて凱旋した将軍のように、得意満面だった。

彼の視線は時田浅子をじっと見つめていた。

時田浅子はすぐに何かがおかしいと感じ、すぐにベッドに這い上がり、反対側から逃げ出そうとした。

しかし藤原時央は彼女の意図を先読みし、彼女の小さな足を一つかみにした。

時田浅子は彼に引き戻された。

位置はちょうど良かった。

「藤原時央、あなた...厚かましい!」

「浅子、厚かましいのは俺じゃない。お前が甘すぎて、いつも人を制御不能にさせるんだ」

時田浅子は腹が立った。

明らかに彼が度を越して求めているのに、責任を彼女に押し付けている。

「ダメ!」彼女は彼を見つめ、強い態度で拒否した。