第397章:刺激された勝負欲

時田浅子は振り向いて携帯を探しに行ったが、ベッドサイドテーブルには一台の携帯電話しかなく、それも藤原時央のものだった。

彼女はようやく思い出した。彼女を誘拐した人物が、彼女の携帯電話を踏み潰したのだ。

電話もかけられず、彼女は本当に柳裕亮の状況を知る術がなくなった。

「一回だけ呼ぶから、ごまかさないでね」時田浅子は頬を膨らませて藤原時央を見つめた。

藤原時央はうなずいた。

「だ...だんな様」時田浅子の声は蚊のように小さかった。

「聞こえないよ」藤原時央は少しも面子を立ててくれなかった。

「だんな様」時田浅子はもう一度呼んだ。

藤原時央はようやく満足げにうなずいた。

「さあ、早く教えて!」

「柳裕亮は大丈夫だ。見深のところで朝まで点滴を受けて、もう帰った」

「よかった」時田浅子はほっと息をついた。「私、この件は私を狙ったものだと思うの。もし私のせいで他の人に迷惑がかかったら、心苦しくて」