「浅子、そんなに早く歩かないで、痛いよ」
お爺さんと大木嵐は顔を見合わせ、二人とも驚きの表情を浮かべていた。
藤原時央は今、甘えていたのか?
藤原時央と時田浅子の姿が階段を上がって見えなくなるまで、大木嵐とお爺さんの視線はそこから離れなかった。
「さっき浅子は本当に走って帰ってきたの?」
「ええ、安藤さんが彼女に話したら、すぐに落ち着かなくなって、きっと時央が叩かれるのを心配したんでしょう」
「知っていたら、藤原時央をもっと叩いておくべきだった!これで彼がまた斉藤若春と関わろうとするか見ものだ」
「あの斉藤若春は手ごわい相手ですよ」
「彼女が手ごわいかどうかに関係なく、蠅は隙間のない卵には寄り付かないものだ!」お爺さんは怒って言った。「さっき浅子が止めなかったら、私はもっと彼を叩いていたよ。私は彼に27回も電話したんだぞ!なのに彼は私の電話に出なかった」
「お父さん、浅子は最近時央の家に泊まっているから、多分寝坊したんでしょう」
お爺さんは時田浅子の首筋の痕を思い出し、「彼の家に泊まっているからって何だというんだ?ひ孫を抱かせてくれるわけでもないのに!」
……
階上で、時田浅子は藤原時央のシャツを脱がせた。背中に二本の紫赤色の痕が目に飛び込んできた。
時田浅子は思わず手を伸ばして押してみると、藤原時央はすぐに背筋を伸ばした。
「どうしてこんなにひどいの」
「お爺さんが適当にやっているとでも思ったのか?」
「あなたはいつもこんな風に叩かれているの?」時田浅子は想像できなかった。お爺さんがどうして忍びないのか。
それに、藤原時央のような人は、きっと子供の頃からとても優秀で、間違いなく模範的な子供だったはず。可愛がられこそすれ、どうして叩かれることがあるのだろう?
「いつもというわけではない」藤原時央はあいまいに答えた。彼は時田浅子に心配してほしかった。
お爺さんは毎日彼を叩くと口にしていたが、実際に家法を執行したのは今回が初めてだった。
「薬を塗ってあげる」時田浅子は薬を開け、藤原時央の傷に垂らし、優しく揉みこんだ。
「あの写真は…」藤原時央が突然口を開いた。
時田浅子の動きが一瞬止まった。「あの日すでに説明したでしょう、もう説明しなくていいわ」
藤原時央は時田浅子の手を握り、彼女を自分の前に引き寄せた。