第595章:宮本凪、諦めないで

時田浅子は体を起こして座り直した。「先にシャワーを浴びてくるわ」

「ちょうどいい、僕も行きたかった。一緒に」

時田浅子は体が軽くなるのを感じ、また彼に抱き上げられた。

彼の目の奥に先ほど消えかけていた熱情が、再び燃え上がるのを感じた。

彼が戻ってきたのは、やはり彼女とベッドを共にするためだけだったのだ!

……

数日間の薬物治療を経て、時田秋染の病状は完全に安定した。

宮本凪もほっと胸をなでおろした。

斉藤若春はテーブルに近づき、コーヒーを置きながら言った。「時田浅子のお母さんの容態が安定して、あなたも安心したでしょう。私の心にのしかかっていた石も下ろせました」

宮本凪はコーヒーを手に取り、斉藤若春を観察した。

彼は感じていた。斉藤若春が時田浅子の母親を本当に心配しているはずがない。

彼と斉藤若春の付き合いは長くなく、お互いをよく知っているとは言えなかった。

しかし、斉藤若春の藤原時央への愛情は、彼の前では隠されることがなかった。

彼女は明確に彼に告げていた。この提携を熱心に進めているのは、藤原時央のためだと。

この点では、彼も同じだった。

彼らはみな、自分が大切にする人のために全力を尽くしていた。

「時田浅子のお母さんの容態は安定しました。これからどうするつもりですか?国内に留まりますか、それとも海外へ行きますか?」斉藤若春はさらに尋ねた。

「まだ処理すべき事がいくつかある」

「宮本さん、一言忠告させてください。自分の愛する人を簡単に諦めないで。時田浅子と藤原時央は一緒になれません。彼らは同じタイプの人間ではありません。時田浅子に本当に合う人はあなたです」

「何か内情を知っているんですか?もし藤原時央が浅子に幸せを与えられるなら、私は身を引きます。斉藤社長、もしあなたが藤原時央を手に入れるために浅子を傷つけるなら、私は黙って見ていませんよ!」

斉藤若春は微笑んだ。「見ていればわかるわ」

宮本凪は斉藤若春の意図を理解できなかった。斉藤若春もそれ以上の説明はせず、その言葉を言い終えると、テーブルの上のバッグを取り、立ち去った。

彼が今最も頭を悩ませているのは林清子のことだった。

林清子はまるで消えてしまったかのようで、彼が電話をかけても通じず、あらゆる連絡手段を試しても、すべて応答がなかった。