時田浅子は少し慌てて、母の手を取ろうと手を伸ばした。
時田秋染は冷たくその手を振り払い、立ち上がって病床に向かい、投げやりな様子でそこに横たわった。
時田浅子は急いで追いかけ、声をかけた。「お母さん……」
「お母さんって呼ばないで、もうあなたの母親でいたくないわ」時田秋染はそう言うと、すすり泣き始めた。
「お母さん、泣かないで。やっと少し病状が良くなってきたのに、泣いて体を壊したらどうするの?」
時田秋染は無理に涙を二滴絞り出した。
「浅子、お母さんに正直に言って。あなたは本当に時央と一緒になりたくないの?」
藤原時央:……
彼は顔を上げて時田浅子を見た。
時田浅子の視線もちょうど彼に向けられていた。
二人は数秒間見つめ合った後、時田浅子は慌てて視線をそらした。
「私は……」時田浅子の言葉は口元まで出かかったが飲み込んだ。「今のままでもいいと思うの。再婚のことは、少し時間をくれない?」