第668章:子犬の牙、本当に鋭い

時田浅子も藤原時央の言葉に、その場で呆然としていた。

藤原時央が彼女のフラッシュバックのために、宮本凪を殴ったのだ。

「これからは浅子に近づくな。もう一度彼女に触れたら、お前の手を切り落とすかもしれないぞ」藤原時央のこの言葉は、一言一句に凄みが込められていた。

「藤原様、私は浅子から離れません!」宮本凪は藤原時央の脅しに怯むことなく、断固として答えた。

「私は浅子が振り向けばすぐに見える場所にいます!彼女が幸せなら、決して邪魔はしません。でも彼女が不幸なら、必ず連れ出します!」

藤原時央は拳を握りしめた。もし時田浅子が彼の腕を抱えていなかったら、彼は躊躇なく宮本凪にもう一発お見舞いしていただろう!

宮本凪は頬を押さえながら、振り返って退出した。

広い部屋には、時田浅子と藤原時央の二人だけが残された。

時田浅子は藤原時央の手を見た。宮本凪をあんなに殴ったせいで、彼の手も少し傷ついて赤くなっていた。

「痛い?」彼女は彼の口調を真似て尋ねた。

「痛い」藤原時央は答えたが、まだ怒りは収まっていなかった。

時田浅子は彼の手を持ち上げ、口元に近づけて優しく息を吹きかけた。

藤原時央は突然彼女の後頭部を掴み、激しく彼女の唇にキスをした。

このキスは、まるで彼女の肺の空気を全て吸い取るようだった。

時田浅子は彼の攻勢に耐えられず、体が後ろに下がり続け、ついに背中が壁に当たって、もう下がれなくなった!

藤原時央はまだ狂ったように彼女にキスを続けていた。

まるで空腹の狼が美味しい肉を手に入れたかのように。

時田浅子は、彼が彼女を飲み込もうとしているように感じた。

このキスは時田浅子が窒息しそうになるまで続いた。

時田浅子の頬には涙が溢れていた。

痛くて。

「あの日あなたもいたでしょう。私と宮本凪の間には何も起きなかったって分かっているはず」時田浅子は泣きながら説明した。

藤原時央は手を壁に突き、時田浅子を彼の腕の中に閉じ込めた。

「あの写真を見たとき、宮本凪を殺してやろうと思った!」

時田浅子は彼の言葉の鋭さに怯え、顔を上げて涙目で彼を見つめた。

「自分自身にもっと腹が立った。なぜもっと早く上がって、お前を連れ出さなかったのかと!」藤原時央はさらに言葉を続けた。

言い終わると、彼は頭を下げ、時田浅子の頬を伝う涙を唇で拭った。