「今回雲都に戻ってきたのは、以前私と母が住んでいた家を処分するためよ。どうせもう戻って住むことはないから」
「わかった、一緒に行こう。必要な手続きは全部済ませよう」藤原時央は頷いた。
「食事の後、病院に行って林聡明を見舞いたいの」時田浅子はさらに言った。
「いいよ」藤原時央は静かに承諾した。
時田浅子が病院に着いたときは、もう9時近くだった。
林聡明はまだ点滴を受けていた。薬の中に血圧を下げる薬が含まれていたため、点滴の速度はゆっくりで、彼は一日中何も食べていなかった。
助手が食事を買ってベッドの横に置いていったが、彼はこんな惨めな姿を人に見られたくなかったので、助手を帰らせ、専門の看護人も頼まなかった。
彼は苦労してベッドから起き上がった。トイレに行くにも、水を一口飲むにも、全て自分でやらなければならなかった。
この瞬間、彼は激しく後悔していた。
もし斉藤愛梨に目を曇らされることなく、時田秋染と穏やかに暮らしていれば、今のような結末にはならなかっただろう。
彼の脳裏には、制御できないほど時田浅子の幼い頃の光景が浮かんできた。
時々、彼が遅く帰宅すると、時田浅子は車の音を聞いただけですぐに階段を駆け下り、抱っこしてもらいたがった。
時には、彼は適当に抱きしめるだけで、すぐに寝るように言っていた。
斉藤愛梨と林清子ができてからは、時田浅子に対する態度はずっと冷淡だった。
彼の愛情はすべて斉藤愛梨と林清子に向けられ、時田秋染と時田浅子を大切にしたことは一度もなかった。
彼の心の中では、彼女たちに裕福な生活を与えるだけで十分で、それ以上を求めるべきではないと思っていた。
それは高慢な施しと態度だった。
実は、あの頃、時田浅子は彼になついていたが、時田秋染はすでに彼と親密な関係を持たなくなっていた。明らかにあの時点で、時田秋染は彼に絶望していたが、時田浅子のことを考えて離婚しなかっただけだった。
当時の彼は、時田秋染に対応する必要がなくなったことを喜んでいた。
こうしたことを思い出すほど、林聡明の心は痛み、まるで無数の蟻に心を食い荒らされるような痛みだった。
彼はため息をつき、これからまだ多くのことを処理しなければならないと考え、気力を振り絞って起き上がった。