藤原航は近くにあったコップを手に取り、水を注いで島田香織に数口飲ませた後、ポケットからコーンキャンディーを取り出して彼女の口に入れた。
コーンキャンディーの甘い香りが唇に広がり、島田香織は少し意識が戻り、冷たい表情で藤原航を見つめて言った。「もう二度と会いたくない」
藤原航の冷たい瞳に一瞬の悲しみが浮かんだが、すぐに消え去り、落ち着きを取り戻すと、骨ばった指で島田香織の額に触れた。
彼の手は相変わらず冷たく、まるで年中溶けない雪山のようだった。
「まだ熱がある」藤原航は島田香織の布団をきちんとかけ直しながら言った。嫌悪感に満ちた瞳と目が合うと、つい昔の島田香織を思い出してしまった。
昔の島田香織はいつも情熱的な眼差しで自分を見つめていた。彼は彼女がそうして自分を見る姿が好きだった。当時は表面上は何も表さなかったが、心の中では嬉しく思っていた。