島田香織は周りの人々が陸田健児に寝返ったと感じていた。
家では陣内美念が陸田健児の良さを語り、会社では奈奈さんが陸田健児の良さを語り、もし彼女がドラマの撮影に入れば、毎日陸田健児と接触することになる。
「島田お嬢様、旅行バラエティ番組があるのですが、お引き受けになりますか?」奈奈さんは書類の山から『一緒に世界を旅しよう』というバラエティ番組の契約書を取り出して島田香織の前に差し出しながら言った。「レギュラーメンバーはすでに決まっていて、お嬢様が参加されるなら執事役しかないのですが、私が見たところ、この執事という役をうまくこなせば、ファンの獲得には最適だと思います。」
島田香織は契約書を開いて、中身を注意深く読んだ。説明によると、執事はすべてのメンバーにサービスを提供する役で、いわゆるサービスとはメンバーが何の心配もなく旅行を楽しめるようにすることだった。他のメンバーより若干画面に映る時間が多く、確かにファンを獲得しやすい役どころだった。
「いいわ、この番組について交渉してきて。」島田香織は他のメンバーのリストを見た。知らない人ばかりだったが、年齢は彼女と同じくらいで、きっと話が合うだろうと思った。
奈奈さんは満面の笑みを浮かべ、「はい」と答えて部屋を出て行った。
彼女は島田香織のオフィスを出るとすぐに、陸田健児にLINEを送った。
「陸田スター、島田お嬢様が『一緒に世界を旅しよう』の番組に出演することを決めました!」
メッセージを送り終えると、奈奈さんは満足げに携帯をポケットにしまった!
島田香織は他の書類を開き続けた。彼女は以前もめったに会社に来なかったが、部下たちが会社を整然と運営していて、まったく心配する必要がなかった。
10時に会社の定例会議があり、島田香織は書類を整理して会議室に向かおうとしたところ、オフィスを出たところで奈奈さんに出会った。
奈奈さんは深刻な表情で、唇を噛んで、大きな決心をしたかのように言った。「島田お嬢様、藤原執事がいらっしゃいました!」
「藤原執事?」島田香織は眉をしかめ、疑問に思いながら奈奈さんを見た。藤原執事はいつも藤原おじいさんの側にいるはずなのに。
「はい。」奈奈さんは頷いた。彼女は藤原家に対して良い印象を全く持っていなかった。