120 護衛

「二千二百億!」

「二千五百億!」

「二千八百億!」

……

競売の価格が次第に上がっていく中、奈奈さんの瞳に不安の色が浮かび、島田香織の耳元に近づいて、小声で尋ねた。「島田お嬢様、もしかして……」

島田香織は目の端で少し離れた席に座っている岡田彰人を見た。今回の競売で最大のライバルは岡田彰人だった。彼が声を上げるのを待っていた。「もう少し待ちましょう」

奈奈さんは唇を引き締めて微笑んだ。会社が設定した底値まであと少しだと思った。今や競売価格は三千億まで上がり、残りは三社による競り合いとなっていた。

島田香織は岡田彰人がまだ声を上げる様子がないのを見て、冷ややかな表情で言った。「始めましょう。五十億ずつ上げていきます」

奈奈さんは手元のプレートを上げ、声を上げた。「三千二百五十億」

残りの三社は島田香織が値を付け始めたのを見て、お互いに目配せし、意地悪く値段を吊り上げようとした矢先、岡田彰人が冷淡に口を開いた。「三千三百億」

岡田彰人の発言に、三社の人々は予想外の展開に驚いた。彼らも値を付けたかったが、岡田家を怒らせることを恐れ、諦めるしかなかった。

「三千三百五十億」奈奈さんは再びプレートを上げた。

島田香織は岡田彰人を見た。岡田彰人も彼女を見つめていた。司会者が西城の土地が彼女のものになったと宣言するまで、岡田彰人は最後まで声を上げなかった。

富田悠太は岡田彰人の隣に座り、彼を見て困惑した表情で尋ねた。「続けて値を付けなかったんですか?」

岡田彰人は富田悠太に嫌そうな目を向け、それ以上何も言わなかった。

島田香織は既に奈奈さんに手続きを任せており、岡田彰人の前まで歩み寄り、笑顔で呼びかけた。「岡田社長」

彼女が以前調べた資料によると、岡田家はこの土地を是が非でも手に入れたがっていたはずだった。しかし今回、岡田彰人は意図的に彼女に道を譲ったようだった。「ご配慮ありがとうございます」

岡田彰人は軽く頷いただけで、それ以上何も言わず、外へ向かって歩き出した。

富田悠太は島田香織に挨拶を済ませると、岡田彰人について外に出た。彼は岡田彰人の後を追いながら、困惑した表情で尋ねた。「前はこの土地を絶対に手に入れたいとおっしゃっていたのに、なぜ手放したんですか?」

岡田彰人は富田悠太を一瞥し、冷淡な表情で言った。「航から電話があったんだ」