131 お姫様抱っこ

島田香織は首を振って、笑いながら言った。「大丈夫よ」

陸田健児は陣内美念の方を向いて、真剣な表情で約束した。「陣内さん、ご安心ください。私は島田を誰にも虐めさせません」

そう言うと、陸田健児は島田香織の手を取り、遠くへ歩き出した。

陣内美念は最初、二人の後を追おうとしたが、邪魔になるかもしれないと思い直し、結局グラスを手に別の方向へ歩いていった。

島田香織は陸田健児に握られている自分の手を見下ろし、それから彼の後ろ姿を見つめた。心の中に奇妙な感覚が芽生え、静かに手を引こうとしたが、陸田健児の握り方があまりにも強く、振り解くことができなかった。

「陸田さん、どこへ連れて行くの？」島田香織は少し困ったように言った。今は藤原航の前で辱められたくなかった。疲れていて、ただ家に帰りたかった。

島田香織の言葉を聞いて、陸田健児は口角を少し上げ、言った。「ここから離れたいんでしょう？今すぐ行きましょう」

島田香織は内心ほっとして、苦笑いしながら言った。「そうね。でも、そんなに急ぐ必要はないでしょう」

島田香織の言葉を聞いて、陸田健児は何かを思い出したように、彼女の足元を見た。彼女の細い足には10センチのシルバーのハイヒールが履かれていた。

陸田健児は優しく微笑んで、かがんで島田香織をお姫様抱っこした。

島田香織は反射的に陸田健児の首に腕を回し、顔を上げると、星のように輝く彼の瞳と目が合い、一瞬我を忘れた。

かつて誰かが同じような眼差しで彼女を見つめていたような気がした。ただ、その人の顔は思い出せなかった。

島田香織は周りの人々の視線に気づき、思わず頬を赤らめ、小声で言った。「早く降ろして。みんなが見てるわ」

陸田健児はどうしてこんなに人を抱くのが好きなんだろう？重くないのだろうか？

周りの人々は陸田健児がお姫様抱っこしているのが島田香織だと気づいて、一様に驚いた様子だった。

先日、島田香織と陸田健児が付き合っているという噂が流れ、パパラッチが二人が同じマンションに入る写真を撮っていたが、当事者たちは何の反応も示さず、皆これは嘘だと思っていた。

陸田健児は陸田家の御曹司で、陸田家が離婚歴のある女性を、それもバックに金主がいるかもしれない女性を息子の嫁として認めるはずがないと。