194 私の邪魔をした

富田悠太は藤原航が漫画を読んでいるのを見て、イライラした表情でスマホを取り出してゲームを始めた。

夜型人間になっていたので、この時間でも眠くなかった。

しばらくすると、藤原航が寝てしまったのを見て、布団を掛けてあげた。

「香織...」

藤原航がぼんやりとした声で呼んだ。

富田悠太は布団を掛けていた手が一瞬止まり、少し諦めたように溜息をついた。

藤原航は本当に島田香織のことが好きなんだ。

藤原航とは親しい仲で、彼が藤原おじいさんに支配されていることもよく知っていた。

藤原航が十歳の時に藤原家に戻ってきたため、藤原家の人は今でも彼を家族として受け入れていない。たとえ今は藤原グループの社長になっていても。

当時、富田悠太は藤原航に結婚しないように忠告した。島田香織が嫁いでも、苦しい生活を送ることになるのが分かっていたからだ。

しかし藤原航は島田香織を守るために、彼女と結婚した。

最初、藤原航は藤原家が島田香織を困らせるだけだと思っていたが、まさか誰かが彼女を殺そうとするとは思いもよらなかった。そのため、藤原航は島田香織から距離を置き、密かに彼女の安全を守るしかなかった。

愛する人が虐げられるのを見て、藤原航の心も苦しかったはずだ。

富田悠太は藤原航の布団の端を整え、スマホを取り出して陣内美念に電話をしようと思ったが、考え直して諦めた。

そのとき、藤原航のスマホが鳴った。

藤原航は朦朧とした目を開け、藤原おじいさんからの電話だと分かった。

富田悠太は藤原航のベッドの傍で見守っていたが、藤原おじいさんからの着信を見て、同情的に言った。「スマホの電源を切ったほうがいいんじゃない?」

藤原航はスマホを見つめ、少し躊躇してから電話に出た。

富田悠太は空気を読んで、病室を出た。

「航、お前は島田根治の誕生祝いに行ったのか、それとも揉め事を起こしに行ったのか?」

藤原おじいさんの詰問する声がスマホから聞こえてきた。

藤原航は黙ってスマホを少し遠ざけ、声が聞こえなくなってから耳元に戻した。「おじいさん、ただの誤解です。」

「誤解だと?お前は陸田健児を殴っていないというのか?」

藤原おじいさんは怒りながら問いただした。長い間返事がないのを見て、手元の茶碗を投げつけた。「黙っているのか?」

「もう遅い時間ですから...」