あの出来事があったからこそ、島田香織は結婚生活の三年間、それを支えに耐えてきた。
彼女はずっと、藤原航は心の中では温かい人だと思っていた。彼が彼女の良さを理解してくれれば、きっと優しくしてくれるはずだと。
しかし、結局彼女は藤原航の優しさを待ちきれず、離婚してしまった。
でも離婚後、藤原航はまるで別人のように変わり、彼女に優しくなり、好きだと告げた。
しかし、彼女はもう彼を好きになる勇気がなかった。
「酔ってるね」藤原航は島田香織の隣に座り、眉をひそめて言った。「お酒は弱いんだから、これからは控えめにした方がいい」
島田香織はソファーに横たわり、顔を横に向けて冷たく言った。「林秘書が来たら、すぐに帰って!」
「わかった、君は…」
「眠い」島田香織は藤原航に背を向けて体を丸め、完全に無視するような態度を取った。
島田香織は今後お酒を飲まない方がいいと思った。今は頭が少し痛く、体もだるくて動きたくなかった。
「水を飲んで」藤原航はコップを島田香織の前に差し出し、優しく言った。「僕に会いたくないのはわかるけど、自分の体を大切にしないのはよくない」
島田香織は体を起こし、藤原航を横目で見ながらコップを受け取り、一気に飲み干した。「寝るから、もう構わないで」
「わかった」藤原航は島田香織を抱き上げた。
島田香織は抵抗しようとしたが、藤原航に触れた途端、感電したかのように手を引っ込めた。彼の優しさにまた溺れてはいけない。
彼の優しさは巨大なブラックホールのようなもので、一度入ったら二度と抜け出せない。
藤原航は島田香織を部屋まで運び、そっとベッドに寝かせ、布団をかけてやった。
島田香織は枕に頭をつけた途端、まぶたが重くなり、そのまま眠りに落ちた。
島田香織が目を覚ましたとき、すでに夜が明けていた。
昨夜お酒を飲んだせいで、体中がアルコール臭かった。彼女は主寝室のバスルームに入り、シャワーを浴びることにした。
シャワーを浴びた後、すっきりとした気分になった。彼女は化粧台の前に座り、メイクを始めた。これからまた撮影現場に行かなければならない。
ふと目が首のペンダントに留まり、昨夜のことを全て思い出した。