254 藤原航の何が好きなの

島田香織は我に返り、陸田健児に向かって笑顔で「ありがとう」と言った。

陸田健児はその場に立ち止まり、表情に一瞬の躊躇いが浮かんだ後、尋ねた。「一つ聞いてもいいですか?」

島田香織の笑顔が少し薄れたが、陸田健児が助けてくれたことを思い出し、直接追い払うのも悪いと思い、唇を噛んで笑いながら頷いた。

「藤原航のどこが好きなんですか?」陸田健児は島田香織から目を離さずに尋ねた。

彼には理解できなかった。自分のどこが藤原航に劣っているのか。

藤原航は生まれつき冷淡で、何事にも興味を示さない。

おそらく、純粋な若い女の子たちは、そんな男性がかっこいいと思い込み、自分なら藤原航の唯一の存在になれると幻想を抱き、蛾が火に飛び込むように彼に近づいていく。

しかし、彼の知る島田香織はそんな女性ではなかった。

島田香織は賢く、果敢で、意志が強い。どう見ても夢想家のような少女には見えない。

島田香織は少し驚いた。この質問は、以前陣内美念にも聞かれたことがある。

あの時の彼女は、無邪気な表情で答えた。「藤原航は確かにあなたの言うような人です。生まれつき冷淡ですが、優しい時もあります。私は彼の優しさを一度経験して、それを忘れることができず、自然と好きになってしまったんです」

島田香織は過去の自分の言葉を、今陸田健児に繰り返して伝えた。

陸田健児は島田香織の言葉を聞いて、少し驚いたような様子で、眉をひそめて困惑した表情で言った。「僕は彼と二十年以上の付き合いがありますが、彼が優しい姿を見たことは一度もありません」

陸田健児は以前、藤原航と仲が良かった。表面は冷たく振る舞いながら、内心は実際にとても優しい人を多く見てきた。

しかし藤原航はそういう人ではない。彼は誰に対してもこのように冷淡で、まるで感情のないロボットのようだった。

藤原航は以前、外で育てられていた。多くの人は彼が藤原家に引き取られたことを羨ましがり、一瞬にして金持ちになって大きな得をしたと思っていた。

しかし陸田健児だけが知っていた。藤原航は藤原家に戻りたくなかったこと、藤原家のすべてに興味がなかったことを。

陸田健児にはただ理解できなかった。藤原航がいつ優しくなるというのか。

もしかして、自分の見る目が間違っていたのだろうか?