島田香織は我に返り、陸田健児に向かって笑顔で「ありがとう」と言った。
陸田健児はその場に立ち止まり、表情に一瞬の躊躇いが浮かんだ後、尋ねた。「一つ聞いてもいいですか?」
島田香織の笑顔が少し薄れたが、陸田健児が助けてくれたことを思い出し、直接追い払うのも悪いと思い、唇を噛んで笑いながら頷いた。
「藤原航のどこが好きなんですか?」陸田健児は島田香織から目を離さずに尋ねた。
彼には理解できなかった。自分のどこが藤原航に劣っているのか。
藤原航は生まれつき冷淡で、何事にも興味を示さない。
おそらく、純粋な若い女の子たちは、そんな男性がかっこいいと思い込み、自分なら藤原航の唯一の存在になれると幻想を抱き、蛾が火に飛び込むように彼に近づいていく。
しかし、彼の知る島田香織はそんな女性ではなかった。