「何も知らないくせに!」藤原おじいさんはここまで話すと、怒りを抑えきれなくなった。「昨日、島田根治に電話したら、あいつは素っ気ない態度を取っていたのに、今日になって明確に承諾してきたんだ。しかも、我が藤原家の誠意を見たいとまで言ってきた」
「島田根治は結婚式を見たいんだろうと思うが、お前はどうしてまだ他人事のような態度なんだ?」藤原おじいさんは話せば話すほど腹が立ち、藤原航の首に刃物を突きつけたい衝動に駆られた。「お前が結婚するんだぞ。今、お前の義父が言い出したのに、まだ動じる様子もない。島田香織と結婚する気がないのか」
藤原航は本来、この件は林楠見に任せようと考えていた。なぜなら、この結婚式は島田香織の藤原家への復讐になるはずだと分かっていたからだ。
しかし、藤原おじいさんの言葉に藤原航は少し迷いを感じた。島田香織がわざわざ島田根治にこの件を話しに行ったということは、本当に彼と結婚したいと思っているのだろうか?
そんなはずがない。
島田香織は最初から最後まで、彼との結婚を望むような言葉を一度も口にしていない。言葉の端々には復讐の意味が込められていた。
彼は島田香織の復讐を受け入れ、藤原家全てを島田香織に与えることも厭わない。しかし、結婚式に参加したくないし、結婚式を挙げたくもない。
「分かりました」藤原航はそう言うと、躊躇なく電話を切った。
四年前、彼と島田香織の結婚式はシンプルながらも温かいものだった。しかし今は、たとえ豪華な結婚式を挙げたとしても、島田香織の復讐の欲望を隠しきれないだろう。
藤原航は電話を切ると、すぐに林楠見を呼び入れた。
林楠見は恐る恐る外から入ってきた。この数日間、藤原社長の機嫌が悪く、ずっと冷たい表情を浮かべていたため、秘書である彼も余計な口を利けなかった。
「社長」林楠見はオフィスのドアを開け、外から足を踏み入れた。
藤原航は顔を上げ、林楠見を見て言った。「ウェディングプランナーは見つかったか?」
林楠見は、藤原航が最初に結婚式の準備を任せた時のことを覚えていた。その時、彼は驚きのあまり固まってしまった。島田香織が藤原航と再婚するなんて、思いもよらなかったのだ。
当時、藤原航は金は問題ではない、しかし効果は必ず良くなければならないと言っていた。