283 結婚式

富田悠太は藤原航が話したがらない様子を見て、不思議そうに尋ねた。「今日はお前の結婚式という良い日なのに、どうして嬉しそうじゃないんだ?」

「お前に関係あるのか?」藤原航は冷ややかに富田悠太を一瞥し、冷たい表情で言った。

富田悠太は眉をひそめ、数日前の噂を思い出して尋ねた。「結婚式はお前がデザインして、監督までしたって噂を聞いたんだけど、それって嘘だよな?」

藤原航は何も言わず、ただ鋭い視線を富田悠太に向けた。

富田悠太は椅子を引き寄せ、藤原航の隣に座って笑いながら言った。「やっぱりそうだと思った。こんなことお前がするわけないよな。」

「俺じゃないなら、誰だというんだ?」

富田悠太は藤原航のその言葉を聞いて、突然立ち上がった。

「まさか、嘘だろ?」富田悠太は隣に座っているのが藤原航だとは信じられない様子で、噂の感情のないロボットと言われる藤原航が、「航、お前、何か変な薬でも飲んだのか?」

富田悠太は藤原航の返事を待たずに、息を飲んで続けた。「お前、本当に島田香織のことが好きなんだな。なんてこった、いつ好きだって気づいたんだ?どうして俺に言わなかったんだ?」

「もしかして、島田香織が島田家のお嬢様だって知ったからか?」

「それとも、お前、マゾヒストなのか?」

……

富田悠太は藤原航の耳元でずっとぺちゃくちゃと喋り続けていた。

藤原航は富田悠太を白い目で見て、冷淡な表情で言った。「俺は十万の質問箱じゃない。」

藤原航はポケットに手を入れ、その古い携帯電話に触れると、温かい感覚が血液と共に全身に広がった。

富田悠太は藤原航の一言に呆れ笑いをしたが、先日島田香織と陸田健児が一緒に食事をしているのを見かけたことを思い出し、口を開いた。「航、島田香織が最近お前のことをあまり気にかけてないように見えないか?」

藤原航は思わず手を握りしめ、鏡の中の自分を見つめ、しばらくしてから言った。「でたらめを言うな!」

「でたらめじゃない」富田悠太は藤原航の親友だからこそ、知っていることを全て正直に伝えたかった。「島田香織は今、陸田健児とよく一緒にいるんだ。」

「黙れ!」藤原航は冷たい表情で言い放った。

富田悠太は不満げな表情で横を向いた。

藤原家が島田香織と藤原航の再婚を発表し、島田家も反対しなかったものの、この結婚式の準備は全て藤原家が行っていた。