藤原航は駐車場まで歩き、車に乗り込むと、迷うことなく島田香織のアパートまで直行した。
実は彼はまだ島田香織に今後どうするつもりなのか聞きたかった。彼は彼女に全面的に協力するつもりだった。
しかし今、彼が恐れているのは、島田香織がもう藤原家への復讐をやめてしまうことだった。
なぜなら、富田悠太から島田香織が陸田健児と付き合っているらしいと聞いたからだ。
藤原航は心乱れながら古い携帯を取り出し、中のメッセージを一つ一つ読み返した。
ずっと片思いだと思っていたのに、好きな人も自分のことを好きだったなんて。
でも、それは全て新婚旅行の時に台無しになってしまった。
もしあの追っ手がいなければ、もし彼に島田香織を守る力があれば、今のような事態にはならなかったはずだ。
しかし、この世界に「もし」は存在しない。
多くのメディアが島田根治たちが宿泊しているホテルの外で一晩中張り込んでいた。
島田根治と江田景が空港に向かおうとした時、彼らはついに目的の人物を捕まえた。
記者たちが群がり、数え切れないマイクとカメラが島田根治と江田景に向けられた。
「島田社長、昨夜の結婚式についてどう思われますか?」
「島田社長、昨夜の花嫁は島田香織さんのはずではなかったのですか?なぜ人が変わったのですか?」
「島田社長、島田香織さんが藤原航さんとのウェディングドレスを着なかったのですが、二人の結婚式は改めて行われるのでしょうか?」
……
記者たちが口々に質問を投げかけ、普段なら島田根治はとっくに苛立っていただろう。
しかし今日は気分が極めて良く、ようやく鬱憤を晴らすチャンスが来たと思い、容赦なく言った。「この件については皆さん誤解されているようです。実は昨夜の結婚式は元々藤原家の次男と林さんの結婚式だったのです。なぜ多くの人が花嫁を島田香織だと勘違いしたのか、私にも分かりません。」
島田根治の言葉に、記者たちは全員呆然とした。
この結婚式が本当に藤原家の次男と林桃子さんの結婚式だったとは、誰も想像していなかった。
ある記者がマイクを島田根治に向け、不思議そうに尋ねた。「では、なぜあなたが結婚式に出席されたのですか?」