324 痛み

彼の手がまだ痛いのなら、どうして笑えるのだろう?

それとも陸田健児は、もう狂ってしまって、痛みすら分からなくなってしまったのか。

「痛いです」陸田健児は素直に答え、その声には少し可哀想で委屈そうな調子が混ざっていた。

「それなのにまだ笑えるの?」島田香織は陸田健児のその様子を見て、思わず笑ってしまった。

陸田健児は島田香織の笑顔を見つめ、心の奥底で何かが芽生え始めているのを感じた。一瞬、彼は恍惚とし、この瞬間の素晴らしさが本当なのかと信じられない気持ちになった。

島田香織は笑いながら、陸田健児の視線が少しおかしいことに気づき、軽く咳払いをして言った。「もう遅いわ、私はもう休まないと!あなたも帰らないと!」

陸田健児が何か言おうとした時、彼の携帯が鳴り出した。

島田香織が手際よく薬を片付けていると、陸田健児の携帯から東山光の声が聞こえてきた。