382 催眠された

「陸田健児は中にいるの?」

「はい、島田お嬢様。陸田社長はちょうど目を覚まされたところで、中で座っておられます。島田お嬢様、どうか私たちの陸田社長を説得して、医師の治療に協力するよう、お願いします」と東山光は焦った表情で言った。

島田香織は何も言わずにドアを開けて入ると、陸田健児が携帯電話を見下ろしている姿が目に入った。彼は寂しげな表情をしていた。

「陸田社長」と島田香織はベッドの横まで歩いて声をかけた。

島田香織の声を聞いて、陸田健児は目を上げると、スーツ姿で立っている島田香織の姿が目に入った。

東山光が入ってきたのかと思っていたが、まさか島田香織だとは。

陸田健児の黒い瞳がわずかに揺れ、目に光が宿った。

東山光も後に続いて入ってきたが、島田香織と陸田健児の二人がずっと黙ったままなのを見て、焦りを感じ始め、前に出て言った。「医師の話では、陸田社長は危険は脱したものの、合併症には注意が必要だそうです」