448 驚艶

島田香織は眉をひそめ、真剣な表情で言った。「藤原おじいさんの病気は嘘だったんですか?」

「以前の病気は本当でしたが、今回は恐らく嘘でしょう」藤原航はそう言いながら、島田香織に近づき、キスしようとした時、香織が顔をそらしたため、頬にキスが落ちた。

「もういいわ、お風呂に入らないと。明日の朝は会議があるの」香織はそう言って立ち上がり、浴室へ向かった。

香織が二歩ほど歩いたところで、藤原航に腕を掴まれた。

彼女は振り返って藤原航を見た。

藤原航は意味ありげな笑みを浮かべながら言った。「もし君にそういう欲求があるなら、明日遅刻しても構わないよ」

そう言いながら、藤原航は意味深な目で香織を見つめた。

香織は呆れて、藤原航の厚かましさに思わず笑いながら急いで言った。「でも私、遅刻は嫌なの」

年末年始休暇の最終日も終わり、明日から会社に戻らなければならない。

しかも明日は鈴木グループの買収に関する件の処理も続けなければならない。

藤原航は立ち上がり、一気に香織を抱き寄せ、見下ろしながら優しく言った。「僕の目には君しか映らない」

「でも今は、お風呂に入りたいだけよ」香織は藤原航に向かって軽く微笑んだ。

「じゃあ一緒に入ろう。節水になるし」

香織は苦笑いしながら藤原航を押しのけ、寝室へ向かった。

藤原航はソファの横に寄りかかり、香織の後ろ姿を見つめながら、口角を上げた。

実は彼はこの期間かなり忙しかった。鈴木グループの買収は順調に進んだものの、年末前のデータ漏洩事件は軽視できない問題で、最近結果が出たようだ。

実際、結果を待っているのは香織だけではなく、藤原航が引き継いだプロジェクトでこれほど大きな問題が起きたため、安川市では多くの人々が藤原航の失態を見守っていた。

島田家がどれほど強大であっても、藤原航のために中島家と直接対立することはできないはずだ。

翌日になって判明したのは、機密を漏洩したのは会社の主任の一人で、その人物は解雇され会社を追われた。

人々がもう話題がないと思った時、MKコーポレーションが藤原航にZ国CEOの招聘を出した。

誰もが驚愕した。

藤原航が先日ミスを犯したばかりなのに、今また外資系企業から招聘が来るとは。

MKコーポレーションの通知が出た時、香織だけでなく、藤原航の失態を期待していた多くの人々も呆然とした。