藤崎雪哉は電話をかけていて、彼女の表情の変化に気づいていなかった。
工藤みやびは苦悩に満ちた表情で藤崎雪哉の背中を見つめていた。彼女はどうして彼にあんな獣以下の行為をしてしまったのだろう。
昨夜、池田輝が時間通りに現れなかったら、くそっ、彼女は本当に藤崎雪哉を車の中で押し倒していただろう。
藤崎雪哉は電話を切り、振り返って眉をひそめ苦しそうな彼女の様子を見た。
「まだ具合が悪いのか?」
工藤みやびは何度も首を振り、どもりながら言った。
「昨日の夜は……本当に故意じゃなかったんです。」
「何が故意じゃなかったんだ?」藤崎雪哉は眉を上げた。
「無理やりキスしたこと、故意じゃなかったんです。あの時は頭がはっきりしてなくて、どんな男性でも飛びついていたと思います……」工藤みやびは自分の行動を悔しそうに説明した。