第54章 今からは、私があなたにいる

藤崎雪哉の黒曜石のような瞳は暗雲に覆われていた。藤崎千颯が注いだ水を軽く一口飲み、何気なく言った。

「山本守があなたを捕まえようとしている」

工藤みやびは愕然とした。前回、彼女があんなに山本守と中山美琴の二人を出し抜いたのだから。

彼らはとっくに彼女に仕返しに来るはずなのに、もう何日も経っているのに彼女を探し出していなかった。

この数日間、彼女は外出する際に周囲に警戒していた。竹内家や山本守が彼女に問題を起こしに来るのを防ぐためだった。

しかし、怪しい人物も、山本守の手下も、彼女を尾行する人も見つからなかった。

どうやら、彼は山本守が彼女を探しに送った人々を片付けただけでなく、その腕前も優れていて、彼女に気づかれることもなかったようだ。

彼女は長い間黙っていた後、ダイニングルームで存在感を薄めようと努力している藤崎千颯を一瞥した。