アパート、地下駐車場。
藤崎千颯は、そのまま立ち去るべきか、それとも上がって様子を見るべきか、焦りながら考えていた。
そのとき、エレベーターホールの方向から藤崎雪哉が歩いてくるのが見えた。
ただし上着は着ておらず、ネクタイもなく、シャツの襟のボタンも数個外されていた。
普段の冷たく厳格なイメージとは一変し、全身から...欲求不満の色気が漂っていた。
藤崎雪哉は車に乗り込み、「天水ヴィラに戻る」と言った。
藤崎千颯は不思議そうに振り返って後部座席の人を見た。さっき入っていくときはきちんとした身なりだったのに。
今は服装が乱れて出てきたということは、何かあったに違いない。
でも本当に何かしたのなら、彼が下りてきたのはたった30分前だ。兄さんが...そんなに早いわけないだろう。
「発車しろ!」