朝、皆はいつものように二つのシーンを撮り終え、昼食を食べた後、メイクを直し終えると、取材メディアとファンの代表たちが訪れた。
しかし、基本的に来たのは竹内薫乃と藤崎千明のファンばかりで、二人に花や食べ物を贈り、熱心に二人を取り囲んで気遣いの言葉をかけていた。
工藤みやびは新しいスタイルに変える必要があったため、監督助手が撮影準備の通知をするまで、メイクルームから出てこなかった。
ちょうど現場に来ると、藤崎千明のファングループから二人の女の子が飛び出し、駆け寄って彼女を抱きしめた。
「みやび!」
「先生!」
工藤みやびは片手に後で着けるマスクを持ち、驚いて二人を見つめた。
「紀子、千晴、どうしてここに?」
「撮影現場を見に来たの。ついでにあなたの誕生日をお祝いするために」と西村千晴が言った。
鈴木紀子は驚いて彼女の周りをぐるりと見回し、手を伸ばして彼女の衣装に触れ、目を輝かせた。
「先生、男装がこんなにかっこいいなんて」
西村千晴は呆れた様子で彼女を横目で見た。「惚れぼれするのはやめなさいよ、彼女は女の子なんだから」
「でもすごくかっこいいじゃない」鈴木紀子は自分の熱狂ぶりを全く隠そうとしなかった。
「いつ着いたの?宿泊先は決まった?」工藤みやびは二人を見て尋ねた。
「昨日の夜に着いたの。遅かったからあなたを探さなかったけど、撮影隊の向かいのホテルに泊まってるわ」西村千晴は鈴木紀子ほど活発な性格ではなかったが、表情には喜びが隠せなかった。
「それで、合格通知は来た?」工藤みやびが尋ねた。
「来たわ、私たち二人とも合格したの」鈴木紀子は興奮して言った。
三人が楽しく話している時、二人の女性が物を持って近づいてきて、不機嫌そうな表情で工藤みやびに差し出した。
「これは薫乃がスタッフに配るようにと言ったお菓子よ。あなたの分もあるわ」
「私たちの薫乃は美しくて優しいから気にしないけど、私たちはあなたが演技中に人を傷つけたことを許さないわ」
その口調は、彼女にこれだけのものをあげるのが、大きな恩恵であるかのようだった。
工藤みやびはちらりと見て、丁寧に微笑んだ。
「すみません、私は甘いものは食べないんです」
誰が知るだろう、このお菓子に何か変なものが入っているかどうかなんて。