このシーン、うまく撮れれば、小倉穂は観客から愛され、同時に憎まれるキャラクターになる。
もし撮れなければ、小倉穂は視聴者から袋叩きにされる大悪役になってしまう。
このシーンの小倉穂は、彼女の真実と純粋な愛を完全に演じきり、観客の心をつかむのに十分だった。
そして、さっきの藤崎千明も演技が爆発していた。
あの酔った目で「小倉さん、君は本当に美しい」と言ったセリフは、まさに神がかっていた。
監督は二度見て、藤崎千明の肩を叩いた。
「実力で勝負できるのに、なぜ顔だけで生きようとするんだ」
藤崎千明は自分の髪型を整えながら、誇らしげに言った。
「顔で食べていけるのに、なぜわざわざ実力に頼るという苦労をしなければならないのか」
「……」工藤みやびは口角を引きつらせた。
監督の安藤泰は無言で彼に白い目を向け、工藤みやびに向き直ると一転して笑顔になった。