第193章 顔で飯が食えるのに、実力に頼る必要があるのか

このシーン、うまく撮れれば、小倉穂は観客から愛され、同時に憎まれるキャラクターになる。

もし撮れなければ、小倉穂は視聴者から袋叩きにされる大悪役になってしまう。

このシーンの小倉穂は、彼女の真実と純粋な愛を完全に演じきり、観客の心をつかむのに十分だった。

そして、さっきの藤崎千明も演技が爆発していた。

あの酔った目で「小倉さん、君は本当に美しい」と言ったセリフは、まさに神がかっていた。

監督は二度見て、藤崎千明の肩を叩いた。

「実力で勝負できるのに、なぜ顔だけで生きようとするんだ」

藤崎千明は自分の髪型を整えながら、誇らしげに言った。

「顔で食べていけるのに、なぜわざわざ実力に頼るという苦労をしなければならないのか」

「……」工藤みやびは口角を引きつらせた。

監督の安藤泰は無言で彼に白い目を向け、工藤みやびに向き直ると一転して笑顔になった。