第220章 彼女を寝かしつけなければ

エレベーターに入ると、工藤みやびは手すりをしっかりと掴み、目を閉じて深呼吸を数回した。

彼女はかつて、工藤司に再会したら、心が引き裂かれるほど痛むだろうと思っていた。

しかし実際は、そこまで痛くはなかった。

石橋林人は心配そうに傍に立ち、そっと尋ねた。

「彼は君を...」

夜中にホテルのスイートルームで、しかもあんな高額の小切手を彼女に渡したのだ。

彼は、みやびが工藤司と何かあったのではないかと疑わざるを得なかった。

「違うわ、彼らは誰かを捕まえようとしていて、私を間違えて捕まえただけよ」と工藤みやびは説明した。

石橋林人は胸をなでおろした。「まったく、魂が抜けるかと思ったよ」

「今夜のことは、三の若様たちには言わないで」と工藤みやびは頼んだ。

「誰にも言ってないよ、一人で裏口からこっそり出てきたんだ」