第232章 あなたと寝に来た

ホテルに戻ると、彼らのフライトまでそれほど時間が残っていなかった。

二人はそれぞれ自分の部屋に戻って荷物をまとめ、撮影クルーと合流して空港へ向かった。

竹内薫乃を工藤家に連れて行かなかったため、薫乃はずっと不機嫌な顔をしていた。

藤崎千明は搭乗を待つ間、こっそり彼女に尋ねた。

「昨夜、一体どうやって工藤司と知り合ったんだ?」

工藤司の今日の行動はあまりにも常識外れだった。

そして彼女も、今日は少し様子がおかしかった。

工藤みやびはもう隠す気もなく、直接答えた。

「昨夜、彼らは誰かを捕まえようとしていて、私を間違えて連行したの。それで石橋林人に電話したら、林人が迎えに来てくれたわ」

「マジかよ、そんな大事なことを俺に言わないなんて!」藤崎千明は怒った。

「言ったところで、あなたはお兄さんに報告するんでしょ?」工藤みやびは彼を横目で見た。

藤崎千明は心虚になって鼻をこすり、話題を変えた。

「じゃあ兄貴には、今どう説明すればいい?」

工藤みやび:「どう説明すべきか、そのまま説明すればいいわ」

藤崎雪哉の前で嘘をつくなんて、少しでも疑われたらすぐに調べられてしまう。

それなら、早めに正直に話した方がいい。

藤崎千明は注意した、「前に自分で言ったじゃないか、兄貴が怒ったら、お前が責任取るって」

工藤みやびは心ここにあらずという様子でうなずき、言った。

「わかったわ、あなたの密告でも何でもすればいいわ」

「じゃあ俺は…」

工藤みやびは横を向いて藤崎千明を見て、頼んだ。

「少し一人にしてもらえる?」

藤崎千明は口をとがらせ、携帯を持って離れた場所に座り、兄に報告の電話をかけた。

工藤みやびはサングラスをかけ、静かに椅子の背もたれに寄りかかり、思考は乱れていた。

やはり20数年間生活していた場所だから、再び戻ってきて心が動かないはずがない。

あの家には、もう彼女の居場所はなかった。

たとえ工藤司を恨んでいなくても、やはり悲しい気持ちになる。

空港で1時間以上待った後、ようやく帰国便に搭乗した。

基本的に、西新宿映画祭で工藤司と堀夏縁を見かけてから、彼女はずっと神経を張り詰めていた。

国内に戻っても、撮影クルーと一緒にいるため、一瞬たりとも気を抜くことができなかった。

ホテルに着くと、藤崎千明はやはり隣の部屋にいた。