藤崎雪哉はスーツの上着を脱ぎ、ソファの背もたれに掛け、彼女の隣に座って一緒に映画を見始めた。
しかし映画は生憎、情熱的なキスシーンの場面になった。
工藤みやびは気まずくなって早送りしたいと思ったが、隣の男性が突然言った。
「お前がオーディションを受ける新しい映画では、キスシーンも、ヌードシーンもベッドシーンも禁止だ……」
「じゃあ何を撮らせるつもり?」工藤みやびは彼を横目で見た。
映画のストーリーでは、時にこういったシーンでプロットを進めることもある。これらを全部撮らないとしたら、ただぎこちない台詞だけで進めるの?
「他の人が何を撮るかは知らないが、お前はダメだ」藤崎雪哉は深い眼差しで彼女を見つめた。
彼は彼女がやりたいことを邪魔するつもりはなかったが、彼にも譲れない一線があった。