堀夏縁の登場により、イベントに参加していた多くの映画関係者が、この伝説的な女優に会いに握手をしに行った。
工藤みやびは堀夏縁の指にあるダイヤの指輪を見て少し驚いた。どうやら彼らの婚約のうわさは、嘘ではなかったようだ。
かつて彼女が工藤司から得たいと思っていたすべてのものを、最終的に堀夏縁が手に入れたのだ。
藤崎千明は、まるで月を取り巻く星々のように熱烈に歓迎される堀夏縁を見て、呆れたように鼻を鳴らした。
「『命果てぬ夢』一本で、何が自慢になるんだ?」
工藤みやびは藤崎千明をちらりと見て、「じゃあ、私たちも映画を撮らない?」
藤崎千明はそれを聞いて、何度も首を振った。
「もう君と一緒に映画を撮ったりテレビ番組に出たりしたくないよ。何もないのに、兄貴が訳もなく嫉妬するんだから」
「千秋芸能で映画を製作するって意味よ」と工藤みやびは提案した。
この『追跡の眼』が公開されれば、彼女は完全に一流の仲間入りができるだろう。
藤崎千明の目に悪戯っぽい光が走った。「へえ、それはいいね。君の演技なら『命果てぬ夢』に全く負けないよ。帰ったら脚本と監督を探すよう指示するよ」
「私が監督するわ」と工藤みやびは言った。
藤崎千明は目をパチクリさせて言った。
「君は映画学院の授業を一度も受けていないじゃないか。演技は才能でなんとかなるかもしれないけど、監督というのは…」
工藤みやび:「独学したわ」
藤崎千明は少し考えて、肩をすくめて言った。
「いいよいいよ、君が楽しければそれでいい」
どうせ映画一本の投資コストは数億円だし、彼女が撮りたいなら撮らせればいい。
最悪彼女がめちゃくちゃにしても、兄に損害賠償を請求すればいい。
「『追跡の眼』の撮影が終わったら、準備を始められるわね」と工藤みやびは真剣に言った。
一本の『命果てぬ夢』で堀夏縁を神の座に押し上げることができたなら、彼女が『命果てぬ夢2』を撮れば、神の座から転落するのを待つだけだ。
彼女は他人が監督する映画に出演するだけで、高い人気と興行収入を得られるかもしれないが、『命果てぬ夢』を超える映画を撮るには何年かかるかわからない。
『命果てぬ夢』は彼女の心血を注いだ作品であり、堀夏縁の今日のすべてを成し遂げたのは彼女だ。