「エコーアクション」の慈善活動がまだ行われていたため、駐車場にはほとんど人がいなかった。
工藤みやびはすぐに藤崎雪哉の車を見つけ、ドアを開けて座った。
「もう監督に休暇をもらったわ。明日また撮影現場に戻るから、家に帰りましょう」
しかし藤崎雪哉は岡崎謙に車を発進させるよう指示せず、横を向いて彼女を見た。
「工藤司に会ったのか?」
工藤みやびは仕方なくため息をついた。藤崎千明が言わなくても、彼女についてきたボディガードが彼に報告するだろう。
彼女は素直に頷いた。「ええ、彼は私から何かを買いたいと言って、5000万を提示したわ」
藤崎雪哉の鋭い目が細くなった。「承諾したのか?」
「ええ」工藤みやびは彼の不機嫌そうな顔を見て、にこにこしながら彼の腕を抱き、頭を傾けて寄りかかった。
「承諾しないと帰してくれなかったの。私はあなたに会いたくて急いでいたのよ」
藤崎雪哉はそれを聞いて心が和らいだが、少し心配にもなった。
「彼が君を困らせたのか?」
工藤みやびは頷き、哀れっぽく彼を見上げた。
「彼は私を脅したわ。言うことを聞かないなら、日本から消えさせると」
藤崎雪哉の目に冷たい光が走った。「おそらく、彼こそが日本から消えるべきだな」
自分の縄張りで、自分の女を脅すとは。
ドランス家がなければ、とっくに奴を地獄に落としていただろう。
工藤みやびはそれを聞くと、すぐに不満を漏らした。
「早く帰りましょう。お腹も空いたし疲れたわ。休みたいの」
藤崎雪哉はそれを聞くと、工藤司のことについてこれ以上考えるのをやめ、岡崎謙に車を出すよう指示した。
「最寄りの天水ヴィラに戻れ」
工藤みやびは彼の胸にだらりと寄りかかり、目を細めながら休みつつ小声でつぶやいた。
「明日は…大変なことになるかも」
「大丈夫だ、俺が片付ける」
藤崎雪哉は彼女が何をしようとしているのか尋ねなかったが、ボディガードと藤崎千明から送られてきたメッセージから、彼女が何をしようとしているのかおおよそ察していた。
彼女が騒ぎを起こしたいなら、好きにさせればいい。後始末は自分がつける。
工藤みやびは何も言わなかったが、眉や目元、口元には甘い笑みが漂っていた。
イベント会場は藤崎雪哉の天水ヴィラがアパートメントより近かったため、二人は直接ヴィラに戻った。