第352章 あなたが騒ぎを起こし、私が片付ける

「エコーアクション」の慈善活動がまだ行われていたため、駐車場にはほとんど人がいなかった。

工藤みやびはすぐに藤崎雪哉の車を見つけ、ドアを開けて座った。

「もう監督に休暇をもらったわ。明日また撮影現場に戻るから、家に帰りましょう」

しかし藤崎雪哉は岡崎謙に車を発進させるよう指示せず、横を向いて彼女を見た。

「工藤司に会ったのか?」

工藤みやびは仕方なくため息をついた。藤崎千明が言わなくても、彼女についてきたボディガードが彼に報告するだろう。

彼女は素直に頷いた。「ええ、彼は私から何かを買いたいと言って、5000万を提示したわ」

藤崎雪哉の鋭い目が細くなった。「承諾したのか?」

「ええ」工藤みやびは彼の不機嫌そうな顔を見て、にこにこしながら彼の腕を抱き、頭を傾けて寄りかかった。

「承諾しないと帰してくれなかったの。私はあなたに会いたくて急いでいたのよ」

藤崎雪哉はそれを聞いて心が和らいだが、少し心配にもなった。

「彼が君を困らせたのか?」

工藤みやびは頷き、哀れっぽく彼を見上げた。

「彼は私を脅したわ。言うことを聞かないなら、日本から消えさせると」

藤崎雪哉の目に冷たい光が走った。「おそらく、彼こそが日本から消えるべきだな」

自分の縄張りで、自分の女を脅すとは。

ドランス家がなければ、とっくに奴を地獄に落としていただろう。

工藤みやびはそれを聞くと、すぐに不満を漏らした。

「早く帰りましょう。お腹も空いたし疲れたわ。休みたいの」

藤崎雪哉はそれを聞くと、工藤司のことについてこれ以上考えるのをやめ、岡崎謙に車を出すよう指示した。

「最寄りの天水ヴィラに戻れ」

工藤みやびは彼の胸にだらりと寄りかかり、目を細めながら休みつつ小声でつぶやいた。

「明日は…大変なことになるかも」

「大丈夫だ、俺が片付ける」

藤崎雪哉は彼女が何をしようとしているのか尋ねなかったが、ボディガードと藤崎千明から送られてきたメッセージから、彼女が何をしようとしているのかおおよそ察していた。

彼女が騒ぎを起こしたいなら、好きにさせればいい。後始末は自分がつける。

工藤みやびは何も言わなかったが、眉や目元、口元には甘い笑みが漂っていた。

イベント会場は藤崎雪哉の天水ヴィラがアパートメントより近かったため、二人は直接ヴィラに戻った。