MGの二人の幹部は、飛び込んできた人物を目を見開いて見つめ、石橋林人よりも百倍も驚いていた。
メ……メリン?
ミューズの主任デザイナー、メリン・カーニル?
ファッション高級ブランド業界では、MGは有名ブランドだが、ミューズこそが真の高級ブランドの王者だ。
彼らの主任デザイナーであるメリンは、極端に風変わりな完璧主義者で、発表する作品は多くないが、どれも世界を驚かせる傑作ばかりだ。
彼のデザイン作品は非常に美しく、一般の人には扱いきれないほどの美しさを持っている。
メリンの極端な選り好みのため、ミューズは広告塔を起用することができない。彼を満足させられる人がいないからだ。
そのため、メリンのデザインはこの業界のトップクラスの作品であるにもかかわらず、知名度や売上においては特別に高いわけではない。
しかし、彼は今、荒木雅を待っていると言ったのか?
MGの二人の幹部は、試着室から出てきたばかりの荒木雅をゆっくりと見つめた。もしかして……彼女はメリンの新作の広告塔になるのだろうか?
メリンは他人の場所であることを全く気にせず、直接工藤みやびの前に駆け寄った。
「私のデザインのどこが彼に劣っているというんだ?君はMGのアジア地域の広告塔に応募して、私と契約しないのか?」
石橋林人は完全に呆然として、しばらく我に返れなかった。
メリンとは誰か?
ファッション高級ブランド業界で最高峰のデザイナーであり、どれだけ多くのセレブやモデルが彼の作品の広告塔になりたくても叶わない。
しかし、彼は今日フランスからイタリアまで飛んできて、自分のタレントを追いかけて契約を結びたいと言っている?
どうやら以前の映画祭で、三の若様がミューズのドレスを一着用意し、自分のタレントが映画祭で皆を驚かせたことがあったようだ。
そして、メリンがツイッターで一言褒めたのだ。
彼らはいつ知り合ったのだろう?しかも、すでに広告塔の契約の話まで進んでいるとは?
「行かないとは言っていません」工藤みやびは軽く笑いながら言った。
よし、とても時間通りに来てくれた。
「じゃあ、彼らと契約したのか?」メリンはサングラスを外して問いただした。
工藤みやびは残念そうに肩をすくめた。「いいえ、彼らはすでに堀さんを広告塔として契約しました」