石橋林人は好奇心と興奮を抱きながら、マーティン・グリーンを連れて階段を上り、自分の所属アーティストの部屋のドアをノックした。
工藤みやびがドアを開け、外の二人を一瞥した。
「何か用?」
「私のデザインスタジオを見に来ないかと誘いたくて」マーティン・グリーンは来意を説明した。
工藤みやびは少し考えてから、軽く笑って言った。
「少し待って、服を着替えるわ」
そう言うと、ドアを閉めて着替えと身支度に行った。
彼女は数分で着替えを済ませ、ドアを開けて言った。
「行きましょう」
「岡崎さんを呼んできます」石橋林人は外出すると聞いて、すぐに言った。
「必要ないわ。彼女にはホテルで休んでもらいましょう。今日は特に予定もないし」
工藤みやびはそう言いながら、彼らと一緒にエレベーターに乗った。
マーティン・グリーンは彼らを会社の本社に連れて行くのではなく、環境の静かな個人のスタジオへと案内した。
「雅、今年発売予定の新作を試着してもらいたいんだけど、よろしいかな?」
石橋林人はそれを聞いて、前に出て言った。
「グリーンさん、それは...あなたたちの広告塔である堀夏縁さんがすべきことではないでしょうか」
正直なところ、彼は少し混乱していた。
最初にホテルのエレベーターでマーティン・グリーンを見たとき、彼は広告契約の話をしに来たのだと思っていた。
しかし、ホテルからここまでの道のりで彼は広告の話をせず、ここに着いてからは彼の所属アーティストに自分の作品を試着させようとしている。
マーティン・グリーンはそれを聞いて、少し申し訳なさそうにため息をついた。
「私は本当に本当に雅にMGの広告塔になってほしいんだけど...ある理由で、会社の他のメンバーは知名度の高い木村夏縁さんと契約することを望んでいるんだ...」
彼のアシスタントはそれを聞いて、再び無奈に訂正した。
「グリーンさん、堀夏縁さんです」
「グリーンさん、あなたのスタジオを見学するためにお招きいただき感謝していますが、私たちにはまだ仕事の予定があり、あまり時間を無駄にできません」石橋林人は困ったように注意した。
彼が広告契約の話をしに来たのでなければ、時間を無駄にしたくなかった。
工藤みやびは石橋林人をちらりと見て、それからマーティン・グリーンに向かって言った。